皮肉にまみれたニューアルバム『Unite / Divide』の魅力
──気持ちが楽になるいいお話をありがとうございます。話はガラッと変わりまして、4月20日に発売されたトライセラのニューアルバム『Unite / Divide』のお話を聞いてもいいですか。ソロを聴いたあとにトライセラのニューアルバムを聴くと、ソロとバンドでやることの違いがとても明確だなと改めて感じました。
和田:僕もソロをやったことで、バンドとの差別化ができるようになったというか、バンドだったらこっちの路線だなっていう。人を高揚させることもそうですし、「怒りのエネルギー」というものもバンドサウンドにフィットするんですよね。そう考えるとソロとはまったく違いますよね。
──アルバムのタイトルも日本語に訳すと「統合/分断」ということで、昨今の時世を感じました。その「怒りのエネルギー」というお話でいくと、アルバムに収録されている「いっそ分裂」という曲は、トライセラにしては珍しくダイレクトに「怒り」を表現した詞ですよね。怒りだけではなく諦め、諦念みたいなものも感じます。公開されているリリックビデオもとても印象的でした。
和田:ありがとうございます。「いっそ分裂」は、かなり皮肉が入っていますね。今回のアルバムは、かなり皮肉にまみれているんですよ(笑)。今まであんまりやってこなかった路線なんですけど。まあ、ここ最近は確実にそのモードだったので。そういったものを表現できる場があるのはありがたいと思いますね。僕、バンドがなかったらツイートで不満ばっかりタラタラ垂れ流していると思うんですよ(笑)。そういうフラストレーションを、よりクリエイティブな音楽という形で昇華できたらいいなぁと。僕はバンドがあるのでラッキーだなと思いますね。今回は、このコロナ禍の2年間で僕が「ご時世」に対して感じたことをかなりブっ込みました。
──それはもうダイレクトに伝わってきましたね。かなり「刺さる」詞でした。
和田:これ、本当に面白い話なんですけど、「あ、こういうことを歌っているのか」って理解してくれる人もいれば、まったく違う解釈をしている人もいるんですよ。「エッ、エーッ!どこをどう読むとそういう風にとれるの?」っていう(笑)。たしかに、いろいろな解釈ができるようには書いたつもりなんですけど。でも怒りをぶつける曲だから、逆にユーモアや言葉遊びも入れているので、さまざまな解釈ができるのかなとは思っていましたけど。でも、まったく違う風にとらえている人もいるんだなって、それがかえって面白いです。でも、それは聞き手の方の自由なので。
──今回のアルバムは楽曲がバラエティーに富んでいて、それこそ一曲一曲がまったく違うテイストで個性的ですよね。リフとコーラスが印象的なトライセラらしいロック「マトリクスガール」、コミカルな音と皮肉な歌詞がユーモアさをより引き立てている「仮面の国」、アメリカの旧き佳きジャズクラブの雰囲気が漂う「CLUB ZOO」、突然の急展開が心地いい「LOST」、エロティックなメタファーがクスッとなる「噴水」、ビートルズの「Something」やバカラックへのオマージュを感じさせる「リメインズ」などの名曲が揃った、ついついヘビロテしてしまうアルバムでした。
和田:ありがとうございます、「噴水」は結構人気がある曲なんですよ。Twitterで「これがいいです、いいです」っていう声が多くて。
──一つのアルバムにいろいろなアイディアが詰め込まれていて、7年4か月という時間を吹き飛ばすくらいの充実した内容ですね。
和田:久しぶりのアルバムで、しかもデビュー25周年だしという
──このジャケットも今までと雰囲気が違いますよね。新たな決意、みたいなものが見えますね。
和田:そうなんですよ、これも流れでこうなったんですけど。最初はもっと違うグラフィカルなデザインのジャケットで進めていたんです。これ、本当はブックレット用の写真だったんですけど、急に思いついてジャケットにしました。移動中に「これだろ!」と思って。最後に大どんでん返しで変わったんです(笑)。
絵本の読み聞かせは「お父さん」だった?
和田:実は、今回の絵本の表紙も当初と変わったんですよ。もとの
──今度こちらの「パールブックショップ&ギャラリー」で、『ばぁばがくれたもの』の原画展が開催されるということで、カズくんこと佐々木一聡さんの原画を直で見られるチャンスですので、ぜひ多くの方に足を運んでいただきたいですね。では最後に、作者の和田唱さんから、絵本『ばぁばがくれたもの』をお読みになる読者のみなさまへ一言お願いできますでしょうか。
和田:そうですねぇ、
──絵本『ばぁばがくれたもの』は5月20日に発売、収録曲の配信も始まりました。そして、ニューアルバムを引っ提げての全国ツアーも6月10日から横浜を皮切りに始まるということで、ますますのご活躍を期待しております。また新しい絵本やアルバムがリリースされましたらお話をおうかがいさせてください、本日はお忙しい中、長時間にわたってお話しいただきありがとうございました。
20年以上前からトライセラを聴いていた一ファンとしては、あの和田唱さんにお会いしインタビューできるということで、数日前から緊張しっぱなしで眠れない日々が続いていました。しかし、いざお会いしてみると、気さくで穏やかでユーモアがあり、そして時折見せる「少年のような眼差し」がとても印象的でした。同じ1975年生まれということもあり、「同世代トーク」でも大盛り上がり。音楽から都市伝説、UFOまで、まだまだお話ししたいことはたくさんありましたが、それはまた次の機会にとっておきたいと思います。今後も、音楽はもとより「目に見えないもの」への追求も続けていくという和田唱さんの活動や言動からますます目が離せなくなりそうです。(MAG2 NEWS編集部 gyouza)
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取材協力(敬称略):
大森洋(トリニティー・アーティスト)
吉田宏子(888ブックス)
【和田唱 関連情報】
『ばぁばがくれたもの』1,980円(税込)
『CD付 ばぁばがくれたもの』3,300円(税込) ※和田唱が本作をもとに制作した楽曲「オレンジ色のやすらぎ」のCDが付いたバージョン
作・和田唱
絵・佐々木一聡
888ブックス
ケンはばぁばが大好き。ばぁばはケンにいろんなものをくれる。オモチャだったり、妖怪の不思議な話だったり、お祭りに連れて行ってくれたり……。大好きなばぁばがある時、病気になった……。
ロックバンドTRICERATOPS の和田唱が、子供の頃からの疑問や、今は亡き愛しい祖父母との思い出から一編の物語をつむいだ。和田の専門学校時代の同級生、佐々木一聡が暖かい絵でこの物語を彩る。和田唱が本作をもとに制作した楽曲「オレンジ色のやすらぎ」は、各種配信音楽サイトでも視聴可能。
帯文:aiko
ブックデザイン:福見敬太(KTAGRANTDESIGN)
判型: 200×290mm カラー32 ページ
TRICERATOPS『Unite / Divide』
前作『SONGS FOR THE STARLIGHT』から7年4カ月、メッセージ、グルーヴ、ポップネスを全て詰め込んだ 快心のオリジナルアルバム、完成。
先行配信シングル「マトリクスガール」「THE GREAT ESCAPE」を筆頭に、完全書下ろしの全12曲を収録。今のトライセラトップスを全面にアピールしたファン待望の実に7年4カ月ぶりのオリジナルアルバム。今の彼らが余すとこなく詰まった25周年を記念する「本当の音楽ファンにきっちり届けたい」至極の1枚。
1. Unite / Divide
2.マトリクスガール
3.CLUB ZOO
4.仮面の国
5. いっそ分裂
6. LOST
7.噴水
8.キミにひとつ地球
9. ROSIE
10. リメインズ
11.THE GREAT ESCAPE
12. 仮面の国 -United-
全12曲収録
TTLC-1017
3,000円(+税)
発売元:TRINITY ARTIST INC.
販売元:SPACE SHOWER NET WORKS INC.
TRICERATOPS『tour 2022 “Unite / Divide”』
和田唱さんがボーカル・ギターをつとめるデビュー25周年を迎えた「トライセラトップス」が、ニューアルバム『Unite / Divide』を引っ提げて、6月10日より横浜、新潟、福岡、仙台、名古屋、大阪、東京と全国7箇所を回る待望のツアーを敢行。バンド7年4カ月ぶりの「快心作」を生で、肌で体感せよ。
6/10(金) KT Zepp Yokohama
6/12(日) 新潟 LOTS
6/18(土) 福岡 スカラエスパシオ
6/26(日) 仙台 Rensa
7/18(祝・月) 名古屋 ダイアモンドホール
7/24(日) 大阪 なんば Hatch
7/29(金) Zepp DiverCity TOKYO
チケット:全席指定 ¥6,500-(税込)
プレイガイドにて発売中!