和田唱が「死はこわくない」と断言する理由
──「優しい世界の表現も良いなぁ」と思った流れで、今回の絵本『ばぁばがくれたもの』を思いついたというところもあるのかもしれませんね。
和田:そうですね、まずソロの「さよならじゃなかった」があって、そこから絵本に繋がっていったわけですから。やっぱり親しい人、愛する人の死っていうのは、もう誰もが平等に経験することなので、どこかで「そんな日が永遠に来なければいい」って思いますけど、でも残念ながら来てしまうじゃないですか。そのときに、ちょっとでも考え方一つで悲しみがやわらいだり、受け入れることができたらいいなぁって思うんですよね。それが本や曲によってそういうことが出来たら。もし小さいときに「あ、人って“死なない”んだ」っていう意識になってくれたら、それっていいなぁって思うんですよ。人間って昔から死を恐れる生き物ですけど、でもそれってみんな平等に訪れるし、死って一つの「卒業」ですよね。実は「寿命」っていうものも、ざっくりと決められてこの世に生まれてきているらしいんです、「たましい」って。たとえば●●歳で死んだとすれば、「その歳まで、こういう経験をするために生まれてきた」って、最初から決められて生まれてきているっていう説があるんですよ。そう考えると楽になりますよね。つまり、すべて間違いなんてものはなくて設定通りに人生を生きているんだって考えると、気持ちが楽になりますね。だから、僕は今後「見えない世界」を表現することも、ちょっとずつやって行きたいなって思っているんですよ。決して怪しくなく(笑)。
──怪しくなくっていうのはポイントですよね(笑)。
和田:もしかしたら、僕がロックバンドをやっているのは良かったのかもしれないですね。そうじゃなかったら、ちょっと怪しい人じゃないですか(笑)。音楽で表現が出来るから良いわけで。でも、やっぱりうちのおじいさんを継いだところあるなぁ。
──おじいさんの「たましい」がそうさせているところもあるんじゃないでしょうか。運命といいますか、必然だったといいますか。
和田:そうですよね、うーん。必然なんですよ、いつもそういうこと考えてますよ。必然だし、でも未来は自分で変えられる、っていう。むずかしいですよね。「寿命は最初から決まっている」「でも未来は変えられる」、僕は両方信じているんですよ。でもこれって矛盾しているんじゃない?って思ったり。だから、僕も分からないことだらけですよ。
──どちらも正しいのかもしれませんよね。
和田:俺、何歳くらいの寿命の設定で生まれてきたのかな(笑)。まったく想像つかないですね。「たましい」のときの記憶がないっていうのが、これまた厄介なんですよ。前世の記憶もないじゃないですか、その記憶があると「学び」にならないらしいんですよ。最初にゲームの攻略法をわかっちゃっているようなものなので、それだと人生が楽しくないらしいんです。何歳でこうなって、何歳でこれを学んで、最後はこうなるぞ!って分かってたらつまんないじゃないですか。だから、ゲームのルールを分からなくさせているらしいですね。
──ルールは決まっているけど、誰も知らない、誰も分からないということですよね。この言い方が合っているのかは分かりませんが「神のみぞ知る」という。
和田:そうなんです、だから自分が「たましい」に帰ったときに初めて「答え合わせ」するんじゃないですか。ああ合ってる合ってる、なんだこれやった方がよかったんだ!とか(笑)。で、次の人生ではこの間の人生で出来なかったことをやろうみたいなことがあるのかもしれないですね。
──そう考えると自分が死ぬということが怖くなくなりますよね。今回の絵本のテーマに通じる話ですし。
和田:人生を恐れることはないんです。何か大失敗やらかしても、それも結局「学び」なので。だから全部受け入れる、「怖くない」と。そういうことですね(笑)。