「目に見えないもの」と「昭和の原風景」をミックスした世界観
──お母様のご実家で見た「原風景」が、今回の絵本の世界観に影響を与えたんですね。
和田:まさにそうです、しょっちゅう行ってましたから。でも、ある時からピタッといかなくなってしまって。まず1986年におじいちゃんが亡くなったんですが、そのとき家の様子がガラッと変わるんですよ。今までいた一家の主がいなくなっておばあちゃんだけになる、同じ家なのにどこか印象が変わって物悲しくガランとした感じで。その頃の印象もよく覚えていますね。
──『ばぁばがくれたもの』の主人公の男の子(ケンちゃん)が、ところどころUFOのおもちゃを持っているシーンが出てくるじゃないですか。あのUFOは、おじいちゃんである平野威馬雄さんがUFOや超常現象の研究家だったことと関係はあるんでしょうか?
和田:これは、カズくんがアドリブというか偶然入れてくれて、それに対してOKを出しただけなんですよ。カズくんって、まずは試しで下書きを描いてくれるんです、こんなのどうかなって。それに対して「情報量が多すぎるからこれはカットでいいんじゃない?」とか「それいいね!」とか、僕は意見を言う楽ちんな役回りですよ(笑)。
──今回、『ばぁばがくれたもの』の中で印象的だったのが、UFOの絵に続いて「たましい」とか「宇宙に帰る」という言葉が出てくることでした。これは、やっぱり和田さんが子どもの頃におじいちゃん、おばあちゃんから聞いてきたことも影響しているのでしょうか?
和田:当時は小さかったし、むしろ現時点での僕の関心ごとが、まさにそれなんですよ。人間って何で生まれてきたのかな?とか、死んじゃったらどうなるのかな?とか、身体が無くなるだけで意識は残るのかな?とか。そういうことは今でも興味があるし、というか今の方が興味があるんですよ。おじいちゃんの血は確実に僕が継いだかもしれないですね(笑)。いわゆるUFOとか未確認のもの、目に見えないものだったり、地球外のものだったり。つまり、学校や今の日本社会が教えてくれないことですよね。でも、2、30年前に比べたら、こういうものを信じている人って確実に増えたと思うんですよ。僕も、今YouTubeの時代になっていろいろな情報を得て「あ、こういうものって、やっぱり本当にあるな」と確信してきているんです。肉体は無くなっても意識は残るとか、「たましい」というものの存在とか。そう考えると、「死というものって必ずしも寂しいものじゃないんだ」って思うようになりました。肉体と会えなくなるのは寂しいですけど、本当のお別れではないんだなって思うと、どこか楽になる。また会えるのかなって。だから、おじいちゃんとおばあちゃんと過ごした昭和の原風景に、僕が今考えている死後の世界や見えないものをミックスしたかったんですよね。それが、今回書いた絵本『ばぁばがくれたもの』なんです。
──絵本を読み進めるにしたがって、不思議な世界が出てきますよね。まさに死後の世界や、夢なのか天国なのかわからない世界、誰も見たことのない「たましい」の世界と言いますか……。
和田:主人公のケンは、祖母を亡くして悲しんでいるママを慰めてあげたいけど自信がない、プラス、不思議なものが見えてしまうち
──このお話を通して「運命は決められているわけじゃなくて、自分の力で未来は変えられるんだよ」という、大人へのメッセージも込められているんですね。昭和の思い出と死後の世界、そして未来への成長がミックスされた壮大なテーマの絵本だったと。
和田:目指しました(笑)。そういったものを全部ミックスして出来上がった絵本です。子どもには難しいかもしれないけど、小さいときに読んでもらって、大きくなるまでの間に少しでも内容を覚えてもらえればいいかなぁと。大人になったときに「ああ、そういうことだったんだ」と思い出してもらえたら、それが一番理想的ですね。本当はもっと長い文章だったんですけど、かなりカットして短くしたんですよ。それでも普通の絵本と比べたらかなり長いほうですけど(笑)。