さて、ロシア軍がキーフを撤退して以来、ロシア軍の残虐行為を「証明」するような映像が流される。
これを見て、日本も含めて世界中の人たちが怒りに震え、プーチンを許すな、ロシアを許すなという声が高まる。
ただ、私は、これについても多少ひねくれたものの見方をしてしまう。
でっち上げでなくても多少の誇張があるのではないかということだ。
我々が南京大虐殺と教えられ、20万人が殺されたと学校でも習った南京事件にしても、私はなかったとは思わないが、誇張は確実にあったと思っている。
実際、中国側が主張した大虐殺ということばも現在では、少なくとも日本では使わなくなっている。そもそも南京の市民のかなりの部分が避難していたため人口が20万人程度に減っていたそうだ。
戦後の調査では1万2,000人程度の市民の犠牲があったというものがあるが、そんなものなのだろうという気がする。もちろん戦闘はあったが虐殺はなかったという説もある。
0から20万人の間のどれかと考えればいい気がするが、被害国は20万人と主張して譲らないし、加害国はなかったという説を唱える人もいるということだ。
ゼレンスキーという人は役者であったことはよく知られていて、外国の国会等の演説でも達人レベルだが、もともとは自らが設立したテレビの制作会社のプロデューサーでもある。
外国向けの映像を流す際に多少の「演出」を行っても不思議はない。
ロシア側が主張するようにねつ造とまでは思わないが、多少「盛っている」可能性はあり得るだろう。
ちょっと倒れている人が足りないから、生きている人に黒こげのメークをして倒れていてもらうくらいのことはないとは言えない。
ロシアのねつ造説を言下に否定し、ウクライナ側(ロシアが撤退したのだから、好きに「演出」できる)の映像を100%「真実」として報じるのは、国民をミスリードする可能性はある。
それによって、ガソリンやガス料金やうどんやパンの値上げに耐え、北海道の漁民が危機にさらされても、「正義」のためと信じるようになるのであれば、哀れなのは庶民だけである。円は安くなっても株価は下がらず、企業は利益を増やしても賃金は上がらず、金持ちは得をするという構図は続くが、それも「正義」のためなのだろう。
貧富の差が拡大するほど、国民の総消費は落ち込むというのがケインズの基本的な考え方だ。
ロシアは経済制裁のおかげで金持ちが多少へこむので格差が是正するが、「正義」を信じる民主主義国では、金持ちの強欲のために、戦時に格差が拡大することを報じるものがいないのも、マスコミというものが金持ちのためのものだということを思い知らせてくれる。
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※本記事は有料メルマガ『和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」』2022年4月9日号の一部抜粋です。
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