4.贈賄の仮構(N弁護人K弁護士の違法介入)を示すZの新供述
(1)上記供述は、贈賄の仮構(いわゆる「デッチアゲ」)を明かすものでもあり、その点において、一層重要である。
Z本人が明かすところによれば、上記のような「すり替え」を考え付いたのは、Nの融資詐欺事件の当時の弁護人のK弁護士であり、同弁護士は、一方では、藤井氏へ贈賄したとNに言わせ(「K弁護士は、Nに、美濃加茂市長選の前に藤井さんにお金を渡したことを警察に話をさせると言っていました」)他方では、藤井氏に渡すための金をNに融通したとZに言わせ(「私がNに貸した50万円を藤井さんに渡したという話をさせるということでした」)Nの藤井氏に対する贈賄を捏造した(「K弁護士が絵を描いたものだった」「Nが、藤井さんにお金を渡したという話を警察でしたのは、K弁護士がすべて絵を描いた話だ」)。
K弁護士の目的は、巨額の融資詐欺事件の捜査を贈収賄事件に向けることで目くらましを図り、量刑取引をするためであり(「Nは、4億円近くの融資詐欺をやっているということでした。それが全部事件になると、とてつもなく重い刑になるので、できるだけ融資詐欺の事件を有耶無耶にする…政治家に金を渡したという話をして、警察の捜査が、融資詐欺ではなく贈収賄の方に向けようというのが、K弁護士の作戦でした」)、実際、藤井氏に贈収賄の濡れ衣を着せようとする前には、名古屋市議をターゲットにして同様の工作を画策していたという(「最初は、名古屋市議会議員に金を渡して、名古屋市の病院に浄水プラントを設置してもらうよう頼んだという贈収賄の話をしていた」「名古屋市議から美濃加茂市長の藤井さんの話しに切り替えようとしているということをK弁護士から聞きました」)。
(2)Z本人は、新供述をするに至った経緯を、
「その後、平成29年にK弁護士は癌で亡くなられましたので、今回、…正直にお話ししました」
と心情を吐露している。
【新証拠の証拠構造上の位置づけ】
Hの陳述書による新供述によれば、Hの記憶に基づく供述は、各現金授受に関する「N証言と金額も含めて整合しているなどと評価できる」ものでも、「Nの供述の信用性を質的に高める」ものでも全くないことが明らかになった。
また、Zの陳述書による新供述によれば、Nが警察の取調べで「美濃加茂市長になる藤井に現金を贈った」と供述し、それに符合するように、Zが、Nに藤井に渡すための金として50万円を貸したと供述したのは、警察の捜査を、融資詐欺ではなく贈収賄の方に向けようというK弁護士の指示で、同時期に、そのような供述を始めたとのことである。
Z・Hの藤井氏の刑事事件での供述は、「後から作為して作り上げることのできない事実」などでは全くなく、H供述は検察官によって、Z供述はK弁護士によって「作為して作り上げられた供述」であるものであることが明らかとなった。
もっとも、Zは、新供述においても、
「Nは、私から金を借りる時に、いろいろな名目で貸してほしいと頼んできていました。その中に、美濃加茂市長になる藤井さんに金を渡したいから金を貸してほしいと言ってきて、貸してやった記憶があった」
と述べており、Nから藤井氏に金を渡したいと言われて50万円を貸した事実を否定しているわけではない。
しかし、Hの新供述によれば、Nは、同時期に、Hにも、藤井氏に金を渡したいと言って50万円を借りていた事実があったとのことであり、Nが、Z・Hらから、藤井氏に金を渡すという名目で金を借りていた事実が認められる。
しかも、Hが、同事実を、Nから藤井氏に金が渡ったことに関する事実として検察官に供述したにもかかわらず、検察官は、その事実を供述調書に録取しなかった。
「Nが、平成25年4月24日頃、Zに対して、借金を申し込むに際し、藤井にお金を渡したいから50万円貸してくれないかと頼んだ事実」から、「Zに依頼した時点で、被告人に対し金銭を供与することを企図していたこと」を推認することの妨げになると考えて、隠蔽したものとしか考えられない。
これらの事実は、藤井氏の確定判決におけるNの証言の信用性評価に重大な疑問を生じさせるものである。
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