誰が嘘をついているのか。郷原信郎氏が公表した美濃加茂市長収賄事件「再審請求」の要点

 

第3の点について

H及びZの新供述によって、上記第3についての確定判決の判断が誤りであったことが明らかになった。

【確定判決】

確定判決は、第一審でのZ証言に基づき、Nが平成25年4月24日頃、Zに対し借金を申し込むに際し、藤井氏にお金を渡したいから50万円貸してくれないかと頼んだ事実を認定し、同事実が、

「Zに依頼した時点で、被告人に対し金銭を供与することを企図していたことを推認させる事実」

だとして、第2授受において藤井氏に現金を渡したとするNの供述の信用性を高めるものと評価している。

また、第一審でのH証言に基づき、浄水プラントの実証実験が始まった後の同年8月22日、Nと、その知人であるHが西中学校に浄水プラントを見に訪れた際、HがNに、「よくこんなとこに付けれたね」と言ったのに対して、Nが、「接待はしてるし、食事も何回もしてるし、渡すもんは渡してる」と発言し、何百万か渡したのかとの質問に、Nが「30万くらい」と述べた事実を認定し、同事実は、各現金授受に関するN証言と金額も含めて整合していると評価している。

そして、

「Z、Hの各証言から認められるこれらの事実は、Nが融資詐欺で逮捕されるよりも9か月以上前とか、5か月以上前であり、後から作為して作り上げることのできない事実であるという意味において、N証言の信用性を質的に高めるもの」

と評価した上、第一審判決がZ、Hの証言をN証言の信用性の判断に関して評価しなかったことが問題だと指摘している。

そして、

「後から作為して作り上げることのできない事実であるという意味において、N証言の信用性を質的に高めるもの」

と評価し、N証言の信用性を認める根拠とした。

【新証拠】

1.Hの陳述書

(1)Hは、検察官の取調べで、「贈賄」側であるNから「渡すものは渡した」と聞いた旨、「Nにいくら渡したのか聞いた」「Nは、30万円と答えた」旨供述しており、確定審でも同様の証言をしていた。

確定判決は、Hの同証言を、「贈賄」者の証言の虚偽性を排除する有力な証拠であり信用性を相当程度担保するものとして、有罪判決の根拠とした。

(2)前提錯誤を明かした新証言
ところが、令和2年10月6日に至って、同人は、上記の供述も証言も、取調べ検察官から「あなたがNに貸してやった50万円から20万円が藤井氏の口座にすぐに入金された」事実がある旨告げられ、「H本人→N→藤井市長」という動かぬカネの流れがあると思い込み、藤井市長にカネが渡ったことは間違いないと即断し、取調べ検察官の筋に合わせた話をしただけだと明かした。

そして、同人自身が

「証人尋問の際に、本当のことがわかっていたら、同じ証言はしませんでした」

「検察官から言われたことが嘘だったことがわかりました。私はそういう話を聞いていたからこそ、藤井さんの裁判で証言した」

と吐露している。

確定審での証言が錯誤に基づくものだったことは明らかである。

そのうえで、H本人が同人自身の記憶として確かに覚えているのは、「よくこんなところに(浄水プラントを)付けられたね」「何百万円か渡したん?」と言ったことだけだと明かしている。

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