誰が嘘をついているのか。郷原信郎氏が公表した美濃加茂市長収賄事件「再審請求」の要点

 

2.違法捜査(検察官の詐術による供述取得)を示すHの新供述

(1)上記供述は、検察官の詐術による供述取得を明かすものでもある。
H本人によれば、伊藤検事(取調べ担当検事)から

「あなたがNに貸した50万円のうち、20万円が、すぐに藤井の銀行口座に入金されていたことがわかった」

「あなたが貸した金が藤井に渡ったことは間違いない」

と言われたという。そして、同検事は、

「Nが、その前に藤井に10万円の賄賂を贈っているが、それも、渡した翌日に、10万円がそのまま藤井の銀行口座に入金されている」

と畳み込み、

「これで、Nが藤井に30万円を渡したことがはっきりした」

と結論付けまでしていたという。

取調べ担当検事は、

「あなたが貸した金から20万円が、すぐに藤井の銀行口座に入金されていた」

と裏付けのない事柄を確信的に申し向けているから、詐術を用いたことは明らかである。

そのうえ、

「その前の10万円についても、渡した翌日に、そのまま藤井の銀行口座に入金されている」

とおっかぶせて、金額の辻褄を合わすために、新たな詐言を弄している。挙句に、

「あなたが貸した金が藤井に渡ったことは間違いない」

「Nが藤井に30万円を渡したことがはっきりした」

などとダメ押ししているとすれば、いわゆる「供述の詐取」に当たることは疑いない。先例によれば、調書や供述の証拠能力が否定される(「信用性」以前の問題である)、強度の違法捜査にほかならない。

(2)H本人も、「私は伊藤検事に騙されていた」「騙されてとられた調書」と言って憤慨している。

3.Zの陳述書

(1) Zは、検察官の取調べで、「藤井市長に渡す金」としてNに50万円貸した旨供述し、確定審でも「Nが私に、藤井市長に渡す金を貸してくれと言ってきたので50万円を貸した」旨証言していた。

これについても、確定判決は、「贈賄」者の証言の虚偽性を排除する有力な証拠であり、信用性を相当程度担保するものと位置づけ、有罪判決の根拠としていた。

(2)ところが、令和2年10月24日に至って、Zは、上記の供述や証言は、実は、単なるNに対する貸金の事実を藤井氏に振り向けたものであることを明かした。

N、Nの当時の弁護人(融資詐欺事件の弁護人]と共謀して、作為的に捜査を攪乱しようとしたものであることを明かした。

Z本人によれば、従来から同人はNから借金を申し込まれ、金を融通してやってきたが、その際には、Nは、いろいろな名目で貸してほしいと頼んできており、その中に、「美濃加茂市長になる藤井さんに金を渡したいから金を貸してほしい」という口実で頼んできたことがあったという。

その際の融通を「藤井市長に渡す金」として貸したという話を警察に供述したのは、上記の捜査攪乱のためであったことを明かした。

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