米国の“弱腰”に批判も。明らかになるロシア兵による「残虐行為」の数々

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3カ月が過ぎても終わりが見えないウクライナ情勢。ロシア軍が去った首都キーウ近郊のブチャでは、ロシア軍による数々の残虐行為が明らかになっています。今回のメルマガ『ジャーナリスト嶌信彦「虫の目、鳥の目、歴史の目」』では、著者の嶌信彦さんが、どういった行為が「戦争犯罪」とされているのかを列挙したうえで、ウクライナの地でのロシア軍と兵による行為を「意図的な作戦でまさしく戦争犯罪だ」と語ったアメリカのブリンケン国務長官を言葉を紹介。にもかかわらず、弱腰な米国の姿勢には批判があると伝えています。

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米国の慎重対応に批判も

ロシア軍のウクライナ侵略と人間性を疑うようなロシア兵によるウクライナの一般市民、女性、少女などへの暴行が次々と明るみに出始めている。それらの行為は国際条約で禁止されているもので、そうした行為を放置しているロシアの大統領・プーチンの「戦争犯罪」を問う国際世論も大きなうねりになってきた。

ロシア軍の行為が「戦争犯罪」と言われているのは、ジュネーブ条約やオスロ条約、ハーグ陸戦条約などで禁止されている攻撃を実施しているためだ。

たとえばダムや堤防、原発などの施設は破壊されると一般市民に危険を及ぼすので攻撃してはならないと定められているし、病院や学校、住宅などの爆撃もジュネーブ条約で禁止されている。また燃料気化爆弾やクラスター爆弾の使用なども禁止されているが、国際人権団体によるとロシア軍がミサイルで病院を攻撃し死者が出たり、各地で複数の学校や一般住宅が攻撃された。

またウクライナの首都キエフ近郊のブチャでは、民間人を中心に400人以上が殺害されたとみられ、無抵抗の男性への銃撃、少女への性暴力、水や食料不足をもたらしたことによる衰弱死──などの犯罪が住民の証言によって明らかになっている。

目を銃撃され遺体となったまま道路に放置された光景や後手に縛られて背後から銃で撃たれた遺体なども複数あったといい、一部は映像で世界に流された。また母親と10代の娘の親子がロシア兵によって地下室に連行され、連日のレイプを止めようとした母親が銃で殺されたなどの報告もあった。

アメリカのブリンケン国務長官は、ロシア軍の虐待疑惑は「意図的な作戦でロシア軍が組織的・計画的に実行したものだ」との認識を公にしている。またウクライナ検察当局は、戦争犯罪の容疑で約5000件を捜査していると明かし、ロシアの組織的犯行とみて追及しているという。こうした実情はアメリカの情報機関も把握している模様で、ブリンケン長官は「我々が目撃しているのは、ならず者による暴走ではない。殺害や拷問、性的暴行など残虐行為を目的にした意図的な作戦だ」とし、まさしく戦争犯罪だと記者団に述べた。

これらに対し、プーチンは5月の第二次大戦対独戦勝記念の式典で「ウクライナへの“特別軍事作戦”は、ウクライナのゼレンスキー政権がネオナチであり、今回の侵攻はウクライナのナチス主義者から人々を守ることを目的としたもので、必然的で時宜を得た唯一の正しい決定だった」と公言している。また、「ウクライナ攻撃の目的はナチスに居場所を与えないためだ」と指摘し、戦いの行方によっては核戦力を使用する可能性もあると示唆して米欧を威嚇している。

さらにロシア軍が制圧した南部のヘルソン州では、州知事やヘルソン市長を解任し、親露派の後任を一方的に任命、同州のロシア編入の方針も言明して“ロシア化”を押し進めている。

こうしたロシアの攻勢に対し、バイデン大統領は“正面から対抗すると第三次世界大戦を招きかねない”として武器供与についても慎重で米国の弱腰に批判が出ている。

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image by:Alexandros Michailidis/Shutterstock.com

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ジャーナリスト。1942年生。慶応大学経済学部卒業後、毎日新聞社入社。大蔵省、日銀、財界、ワシントン特派員等を経て1987年からフリー。TBSテレビ「ブロードキャスター」「NEWS23」「朝ズバッ!」等のコメンテーター、BS-TBS「グローバル・ナビフロント」のキャスターを約15年務め、TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」に27年間出演。現在は、TBSラジオ「嶌信彦 人生百景『志の人たち』」出演。近著にウズベキスタン抑留者のナボイ劇場建設秘話を描いたノンフィクション「伝説となった日本兵捕虜-ソ連四大劇場を建てた男たち-」を角川書店より発売。著書多数。NPO「日本ニュース時事能力検定協会」理事、NPO「日本ウズベキスタン協会」 会長。先進国サミットの取材は約30回に及ぶ。

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