だから国民から支持されない。左派野党が起こしている論理矛盾

2022.06.11
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前回も指摘したが、日本は、人種差別撤廃委員会、女性差別撤廃委員会、子どもの権利委員会、障がい者権利委員会、移住労働者の権利委員会などの国連人権機関や国際労働機関(ILO)などから、さまざまな是正勧告を受けている。

  1. 公共の福祉による人権制限があいまいかつ恣意的な基準でなされている(人権制限のための国際人権法上のルールを明確に法制化するよう勧告されている)
  2. 刑事司法での無罪推定の徹底
  3. 死刑制度の存在
  4. 行刑施設の閉鎖性
  5. 日本軍「慰安婦」問題
  6. 外国人・在日・部落・先住民族への差別
  7. 女性差別・性的マイノリティ差別

などが、国際社会で問題視されてきた。

日本では、人権保障のための明確な政策方針が存在せず、被差別当事者の声が反映されるための制度が設定されていない。そして、「差別禁止法」がないため、差別事例に対して行政的・司法的な救済ができなくなっていると、厳しく批判されているのが現状だ。

もちろん、国連人権機関やILOからの是正勧告の背景には、日本を攻撃しようとする意図が見え見えの過激な団体の過剰なロビー活動があるのは、私も承知している。しかし、そもそも論として、日本の基本的人権保障の状況は、自由民主主義の先進国としては恥ずかしいレベルにあるといえる。せめて、欧米の自由民主主義諸国が普通に守っている程度に国民の基本的人権を保障するよう、政治は対応すべきである。

それには、関連の法律を整備するだけでは十分ではない。憲法改正で人権条項を充実させる必要があると私は考える。

野党が、憲法改正で人権条項を充実させることを訴えるならば、自民党との間に大きな対立軸を打ち立てることになる。自民党は、憲法改正について「4つの変えたいこと」を提案している。そこでは、日本国憲法の3つの原則「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」は変えないとしているが、最も重視しているのは、国民の基本的人権の制限につながりかねない「緊急事態対応の強化」であるのは間違いないだろう。

自民党の「4つの変えたいこと」は、自民党が2012年4月に発表した「憲法改正草案」だからだ。ここでは、基本的人権の保障よりも、国民の義務を明らかに重視している。

例えば、憲法改正草案第12条では、国民に保障する自由及び権利は、「国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない」としている。また、第99条3項では、「緊急事態の宣言が発せられた場合には、国民は、国や地方自治体等が発する国民を保護するための指示に従わなければならない」ことを規定しているのだ(「【自民党憲法改正草案】見やすい対照表で現憲法との違いが分かる!」)。

憲法改正草案の「人権よりも義務」という方向性には、「現行憲法は国民の義務規定が基本的人権の規定よりも少なすぎる」という自民党の本音ともいうべき主張が色濃く反映されている。これに対して左派野党の、憲法とは「権力を縛るもの」であり、権力者に対して「国民のこうした人権は必ず守りなさい」という指示書であるべきだ、という主張から反論が可能である。

他の自由民主主義国家においても、国民の基本的人権の保障の確立が優先されており、その上で国民に対する義務規定がある、という順番である。国際人権機関からさまざまな勧告を受けている通り、日本は基本的人権の確立が不十分であり、まず義務規定の充実よりも基本的人権の保障の確立が先に行われるべきであると、左派野党は訴えるべきなのだ。

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