なぜロングセラー作家は人生で「ベストな選択」をしようとしないのか

Taking decisions for the future man standing with three direction arrow choices, left, right or move forward
 

僕たちの人生はオセロゲームのようなものです。

生まれるという奇跡から人生が始まる。これは最初に置かれるコマが「白」を置くようなもの。その後、白が置かれたり、黒が置かれたりするが、どれほど黒が続いても、次に白がやってきたら、そこまでの黒はパタパタとひっくり返ってすべて白になる。だって最初に「白」が置いてあるから。

誰の人生にもそう感じる瞬間がきっとあります。「ああ、幸せだなぁ」と天に、自然に、人生に感謝したくなる瞬間が。そのとき、過去に自分がしてきたすべての選択が肯定されるのを感じるでしょう。なぜなら、それまでにしてきた大小すべての選択のどこかが違っていてもそこにたどり着くことはなかったのですから。

例えば僕の場合は「娘の誕生」の瞬間がそれでした。

「私」がこの世に生まれる確率の凄さは、きっと誰もが感じたことがあるでしょう。そのとき生まれようとした何億という可能性の中からたった一人選ばれたのが「私」なのです。そこに至る両親のすべての過去が、ほんの少しでも違うものであったら生まれてきたのは「私」ではなかったのです。つまり一人の人間の誕生は、両親という二人の人間の(場合によってはその両親やそのまた両親…の)それまでの人生のすべての選択を肯定する瞬間なんです。「それでよかったんだよ」って。

僕自身、それまでの自分の人生が素晴らしいものだったとか、立派なものだったなんて、自分ではとても言えなかった。でも、娘が産まれた瞬間に、自分が選んできたすべての選択肢が肯定されたんですね。「どれかひとつが違っていても、君には会えなかったんだね」と思うと、自分が並べて生きてきたすべての黒がパタパタパタと音を変えて白になっていくような気がしました。

あれからもう18年以上が経ちます。相変わらず、黒ばかりを並べているような人生ですが、それでも一つの安心感はあります。きっとこれから先の人生のどこかで、また同じように「無上の幸せ」を感じる瞬間はきっとあるでしょう。そのときに、同じようにまた、それまでの自分の決断のすべてが肯定されるだろうという安心感です。

だから、その瞬間を人生の中に生み出すために今日という日があるのでしょう。

というわけで、今週の一言。

「ベストの選択なんてない。選択をベストにするために今日があるんだぜ!」

「パタパタパタ」とあなたの黒が白になる音が聞こえるでしょ(笑)。

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1970年生まれ。2005年「賢者の書」で作家デビュー。「君と会えたから」「手紙屋」「また必ず会おうと誰もが言った」「運転者」など数々の作品が時代を超えて愛されるロングセラーとなり、国内累計95万部を超える。その影響力は国内だけにとどまらず、韓国、中国、台湾、ベトナム、タイ、ロシアなど世界各国で翻訳出版されている。人の心や世の中を独自の視点で観察し、「喜多川ワールド」と呼ばれる独特の言葉で表現するその文章は、読む人の心を暖かくし、価値観や人生を大きく変えると小学生から80代まで幅広い層に支持されている。

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