なぜロングセラー作家は人生で「ベストな選択」をしようとしないのか

Taking decisions for the future man standing with three direction arrow choices, left, right or move forward
 

実は「できる限りベストの選択を」と考えていると、その思いの強さに比例するように「決断」が難しくなる。

「これがベスト」と一度思っても、別の選択肢が現れた途端「こっちの方がいいかも」と思うことってあるでしょ。そういう経験を積み重ねているうちに、一旦何かを決断しかかっても、「いや待てよ、もっといい選択肢がこの後やってくるかもしれない」と迷ったりする。「先に色々情報を集めてから」と行動を後回しにして、情報を集めているうちに真逆のことを主張する情報などが集まってきて、どうしていいかわからなくなる。

さらには「できるだけベストの選択を」という思いが強いと、一度決めたことを継続することも難しくなる。受験生を見ていると、そういうことがよくあるんですね。

英語の偏差値が低い。このままだと大学受験は大失敗しそうだ。そこで一念発起、勉強すると決意して、本屋の受験参考書コーナーに向かう。そこで「どの問題集がベストか」を時間をかけて物色する。「これだ!」と決めて買って帰る。そしてその問題集に取り組み始める。ところが、時間がかかる割に全然実力がついている気がしない。数日後、隣の席に座っている英語が得意な子が自分とは違う問題集を解いている。「それいい?」と聞いてみる。「超いいよ!すごく点が上がった」そう言われると、そっちの方がいいように思える。そこで、再び書店に行って、その問題集を買ってくる。ところがレベルが高すぎて、前の問題集よりも進まない。そんなとき、別のクラスメイトが薄い問題集を使っている。表紙には「0からわかる英文法。これ一冊でWKレベルの偏差値に!」と書いてある。
「これだ!」と思って三度書店へ。そういうことを繰り返している間に実力が伸びるわけではないが、本人はいまだに探している。「ベストの問題集はどれだろう」

側で見ている親や指導者ならその状況を見てため息が出る思いですよね。「そんなの、どれでもいいから一冊に集中してしっかりやれば、実力は伸びる」そう言ってやりたいはず。

大切なのは「どれをやるか」ではなく「どう取り組むか」なのに、いつまで経っても「どれを使えば、何をすればできるようになるのか」を探すことに時間を使っているんですね。

塾選びなどもよくそういうことが起こる。Aにちょっと通ってみる。Bの方がいいという噂を聞いてBに移る。ところが成績が変わらない。そこでCがいいと言われて…。「自分に合うところ」を探しているうちに中々見つからずに時間ばかりが過ぎる。「自分が合わせること」に専念すれば、どこでも結果は出たはずなのに。

「ベストの選択がしたい」と思っている人は、決断が遅くなるだけでなく、一度決断したことすら疑ってしまい、ちょっとした挫折や、思うように成長できないことを理由に「継続」をやめてしまいがちなんです。そしてちょっとした言葉に騙されやすくもなる。

「僕の知ってる方法なら、もっと簡単に、楽していい結果が得られるのに」

という言葉に決断したはずの心が揺らぐんですね。

少しでも思い当たる節がある人は、一度考えてみる必要があります。「自分にとってベストって何?どういう状態?」ということを。

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