「葬式代さえあればOK」が危ない。誰もが落ちる老後資金の落とし穴

2022.06.20
 

介護費用の総額は約800万円!

では、実際にどのくらい介護による負担増があるのでしょうか?

生命保険文化センターの調査によると、住宅の改造や介護ベッドの費用など一時的にかかった費用として74万円。それに月々の費用が平均8.3万円。介護を行った期間は、平均で5年1ヵ月(61.1ヵ月)です。

介護にかかる総額としては、約581万円になります。

  • 74万円+(月額平均8.3万円×61.1ヵ月)=約581万円

認知症の場合には、さらに費用がかかると言われています。認知症の人と家族の会の調査によると介護期間は平均6~7年、10年以上という人が3人に1人強というのですから、かなりの長期になる可能性があります。ですので、800万円くらいは準備しておいた方がいいでしょう。

高齢者施設を利用するとさらに「お金」が必要に

要介護2の場合、介護保険を使って介護サービスを受ける限度額は約20万円です。利用者は原則1割負担(所得により2割負担)ですので、介護サービスを限度まで利用すると月額約2万円の負担になります。さらに限度額を超えた分については、全額負担になります。また介護保険の適用外のサービスも全額負担になります。

もし施設介護を希望する場合は、その負担もグッと増えます。

公的な老人ホームを利用すれば、費用は安くなります。しかし、公的な施設の場合には、要介護などの条件があり、すぐに入れないこともあります。冒頭に述べましたが、特養には要介護3以上でないとダメという条件があります。特養の費用というのも、さまざまですが、だいたい月額15万円はかかります。

民間の施設を検討した場合は、負担はもっと増えます。たとえば、サービス付高齢者住宅では、入居金は、安いところで数十万円。なかには億という超高級な施設もあります。月額の料金も20万円から100万円近いところまでピンキリです。もし首都圏の中程度だとすると家賃分の前払い金は500万円で、月額25万円ぐらいでしょう。

「公的年金」を増やして、安心できる老後生活を目指す

こう考えると、元気なときにお金を使わないと「損」なんて言っていられません。将来の備えもなく、お金を使ってしまうと寂しい老後になってしまいます。

つまり、人生の後半もお金を持っているかどうかで、生活の質が変わるってことにもなりますね。ということは、死ぬまでお金が必要ですが、死んでからお金は必要なくなるということです。これはとても難しいです。だっていつ死ぬのかは、誰にもわからないことです。ぴったりお金を使いきって死ぬってことはできませんからね。

それが可能な老後資金というのは、唯一、公的年金です。年金は、死ぬまで受け取れますが、死んでからは受け取れません。

老後の介護を安定させるには、年金をできるだけ増やすようにすることが大切です。なぜなら介護になったときでも、受給額が多ければ、介護費用もそれで支払うことができます。また施設介護になった場合でも、月額の使用料は、年金を使うことで安定して支払うことができます。

プロフィール:長尾 義弘(ながお・よしひろ)
ファイナンシャルプランナー、AFP、日本年金学会会員。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。新聞・雑誌・Webなどで「お金」をテーマに幅広く執筆。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『最新版 保険はこの5つから選びなさい』『老後資金は貯めるな!』『定年の教科書』(河出書房新社)、『60歳貯蓄ゼロでも間に合う老後資金のつくり方』(徳間書店)。共著に『金持ち定年、貧乏定年』(実務教育出版)。監修には年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』など多数。

image by: Shutterstock.com

長尾 義弘

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