総務省が求める「通信料と端末料の分離」は利用者の利益なのか?

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総務省は、回線契約がない客に端末販売を拒否する例が多くあり、「通信料金と端末代金の分離」を定めた法令に違反するとして、携帯4キャリアと全携協に対して改善を要請しました。しかし、そもそもこの法令自体が利用実態にそぐわず、場合によっては利用者の利益を損なっていると主張するのは、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんです。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』では、スマホがネットワークありきの末端の機器であることを示す“端末”という言葉に注目。周波数などキャリアのネットワークに最適化されたスマホをセットで売るのが現実的であると説明しています。

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総務省が4キャリアと全携協に「不当な端末販売拒否」の改善を要請──そもそも、スマートフォンは完全分離で売れるものなのか

総務省はNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル、全国携帯電話販売代理店協会(全携協)に対して、ショップの業務適性確保に向けた措置を要請した。

公開された文書によれば、不当な端末の販売拒否が相変わらず確認されているという。KDDIで3割、NTTドコモで2割、ソフトバンクで1割、さらに楽天モバイルでも2割で電気通信事業法第27条の3に違反する事案が確認されたと言うことだ。

顧客の獲得競争が激化する中で、iPhoneなどの1円販売が横行。転売目当てに購入する人に対しての販売拒否が、結果として、総務省からの要請につながった模様だ。

今週、ケータイWatchにはNTTドコモ・井伊基之社長のインタビューが掲載され「もう一度、回線と端末はセットで売るべき」という提言があった。

総務省は頑なに「完全分離」を貫こうとしているが、そもそも、スマートフォンが自由競争で売られている製品で、回線と分離して売れるものという認識が間違っている。

ケータイやスマートフォンは別名「端末」と言われることがある。本来であれば思いっきり業界用語であり、記事に使うべき言葉ではないはずだったのだが、なぜか端末という言葉が市民権を得てしまった。

改めて「端末」という言葉を調べてみると「ネットワークに接続されたシステムにおいて末端に位置する装置のこと」とある。つまり、ケータイやスマートフォンはネットワークに接続された末端の機器であり、本来であればネットワークの一部として捉えられる。

特にスマートフォンになって、メーカーが独自に作り、オープンマーケットで自由に販売しているため、パソコンと同じような位置づけで見られることがある。しかし、本来であれば、キャリアのネットワークと密接に連携し、動作しているのがスマートフォンなのだ。

日本だと、アップルが自由にiPhoneをアップルストアで売っているため、MacBook Airと同じように見えるのかも知れないが、アップルはキャリアとネットワークの接続に関して、密に連携を取っている。5Gに対応する際は、各キャリアの5Gネットワークでキチンと動き、パフォーマンスを発揮できるよう、入念に開発を進めていた。

NTTドコモにとってみれば、各スマートフォンメーカーに、同社しか所有しないn79に対応してもらわないことには、端末調達もできなくなる。NTTドコモにしてみれば、これまで行ってきたn79の設備投資を生かすにはn79対応のスマートフォンのラインナップ拡充が不可欠と言える。

各キャリアが持つネットワークを最大限生かすには、各キャリアのネットワーク仕様に合ったスマートフォンが必要なのだ。スマートフォンは自由競争で売れるような商品ではない。キャリアのネットワークに最適化される必要があるだけに、回線とセットにして売るのが現実的なのではないだろうか。

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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