1950年代(当時の最高税率は91%だった)のアメリカも同じことだが、高くてもいいものを買う国民がいる国の製造業が世界で勝つ。国民が貧乏だと安いものしか売れないので、イノベーションが起こりにくい。
アメリカ人も戦前は一般市民が貧しかったのだが、フォードが従業員の給料を倍にすることでまわりがまねをせざるを得なくなり、ベルトコンベアで値段を下げたこともあり、車が買える一般市民が大幅に増えて、モータリゼーションが起こった。
ドイツもヒトラーが高給与政策をとり、ドイツ車が戦前から普及した。
経済がよくなってから給与を上げるというのは金持ちのミカタのマスコミのいうセリフで、先に給与を上げないと景気がよくなるはずがない(と私は信じている)。少なくとも歴史はそう語っている。
今は、利益が上がらなくても、“期待”で自社株の値段もあがる。
給与を増やして、従業員の質を上げれば時価総額も上がるのに、それをしようという経営者がいない。ケチが染みついているのである。
昔の経営者は貧乏から這い上がっているので、庶民の気持ちがわかるし、給料を上げる意味もわかっていた。
二世三世の経営者が増えると、親からの財産を守らないといけないという意識も強いから典型的なケチな金持ちになるし、貧乏人の気持ちがわからないから平気でリストラをし、従業員の給与は上げない。
私は高齢者の消費を増やすために相続税100%論者だが、こういうケチな二世三世の思考を改めるためにも相続税100%論をますます信じるようになった。
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※本記事は有料メルマガ『和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」』2022年6月18日号の一部抜粋です。
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