プーチンが直面する深刻な問題。ウクライナ紛争の戦費調達に垂れ込める暗雲

 

そして、今、ロシアの一番の問題は、天然ガス田や石油掘削やパイプラインの施設維持で、その部品が欧米から提供されなくなり、維持ができなくなっていることだ。このため、設備維持ができずに、生産量の縮小が起きている。

もう1つが、ロシアの世界2位のウレンゴイガス田のパイプラインで火災が発生するなど、パイプラインの火災が複数個所で発生しているが、この復旧機材も輸入できずに、復旧できない。

そして、これは日本が輸入しているサハリン2でも同様であり、LNG化施設の欧米企業の部品提供がなく、生産の縮小になっている。

もう1つが、石油の海上輸送に欧米の制裁で保険が付けられずに、西側諸国の船会社から輸送を拒否されている。ロシアのタンカーで運ぶが、量的に少なくなる。

このようなロシア生命線の天然ガスや石油の生産・輸送ができなくなると、膨大な戦費の捻出ができなくなり、どこかで停戦をしないといけなくなる。1年程度と予想されているウクライナ戦争に、ロシアは耐えることができないことが徐々に明確化してきている。

しかし、欧州も今年の冬までには、天然ガスの代替先を見つける必要があり、中東の天然ガスにシフトすると、日本は原発を稼働させて、需要をシフトさせる必要がある。欧州は、日本より大変で、LNGの陸上施設を早急に準備しないといけない。

このようなことから、西欧では、ウクライナに停戦を要求することになるが、米英国がNATO会議で、西欧諸国の停戦要求を抑え込んで、西欧諸国の3トップのキーウ訪問になったのである。

反対に、サントペテルブルクでの国際経済フォーラムでも、ミシュースチン首相は「経済制裁はすでに克服ずみ」というが、ナビーウリナ中銀総裁は「制裁の影響は半永久的になるだろう」と述べている。

そして、ロシアは、欧米企業の部品が必要であり、ロシア人がビザなしで渡航できるジョージアで企業を作り、そこで欧米部品を買い、ロシアに送っていると、ウクライナは見ている。

しかし、ガス田設備の特殊部品は手に入らない。汎用品の半導体などは手に入れて、兵器製造に使用しているようである。このため、プーチンも兵器増産体制ができたという。

もう1つ、ロシア国内では、今、反体制派ではなく、退役軍人グループや軍事ブロガーが「プーチンは手ぬるい」と不満を発している。こちらも厄介である。彼らの主張通りに、国家総動員法でロシア人を徴集して、多数戦死したら、プーチン再選の目がなくなるし、革命が起きる。

消耗が激しく、ロシアが戦争に勝利できないことはプーチンも自覚している。戦争に勝たないといけないが、それはできないので、勝ったことにして停戦するしかない。

そして、ウクライナはEU加盟を申請し、フォンデアライエン欧州委員長は推薦するとしたが、プーチンもウクライナのEU加盟を認めるという。ウクライナの主権も認めるという。

プーチンとしても、ロシア語話者地域のロシア併合以上の領土拡大を求めない線で、停戦に持ち込みたいようであり、南部ヘルソンやザポリージャなどをウクライナに返還して、交渉をまとめたいとみる。ルハンスクとドネツク人民共和国とクリミア半島は維持する方向である。

しかし、カザフスタンのトカエフ大統領は、ウクライナ東部の親ロ派「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」を国家として承認しない考えを示した。もしかすると、この2つの州もウクライナに返還する可能性もあるようだ。

この記事の著者・津田慶治さんのメルマガ

初月¥0で読む

 

print
いま読まれてます

  • プーチンが直面する深刻な問題。ウクライナ紛争の戦費調達に垂れ込める暗雲
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け