ウクライナ紛争が長期化しそうなウラ事情。世界の紛争地でカネを儲ける「会社」の正体

 

隆盛をきわめる戦争代行サービス業

民間軍事会社(PMC)というのも、冷戦後の世界の歪みにつけ込んで大きく膨れ上がったビジネスである。

前号で、ボスニア・ヘルツェゴビナの血みどろの内戦を全世界にアピールしてムスレム人の政府を助けたのが、ワシントンのPR会社=ルーダー・フィン社だったことを述べたが、同じ時期に旧ユーゴスラビアの連邦崩壊に伴う大混乱に乗じてこの地域に入り込んで行ったのは、PR会社だけではなかった。血の臭いに敏感なPMCこそ実は真っ先に飛び込んで行ったのである。

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菅原出『民間軍事会社の内幕』(ちくま文庫、10年刊)によれば、米PMC業界でも最大手のMPRI(ミリタリー・プロフェッショナル・リソーシズ・インク)が最初に国際的な注目を浴びるようになったのは、90年代前半のバルカン半島での戦争を通じてのことだった。94年に国連が、セルビア本国からボスニア国内のセルビア人地域に支援物資が運ばれていることを「経済制裁破り」だと問題にし、国境沿いに監視団を送るよう米軍に要請したが、米軍が断ったため、結局MPRIが45名の元軍人を送る仕事を請け負った。

次に大きな仕事になったのは、隣のクロアチアの国軍創設で、同国が91年に独立を遂げたものの、ろくな指導者もおらずまともな武器も持たずに途方に暮れていたのを、米政府の了解の下、MPRIが契約を結んで国防省の建設と軍の旧ソ連型から米国型への改造のための教育・訓練を請け負った。その長期的な目標は、クロアチア軍の近代化・民主化を支援して将来同国がNATOに加盟する(すなわち米国の同盟国になる)ことに置かれ、それは2009年に至って実現した。この成功によってMPRIは、ボスニアでも契約を得て兵器操縦を含む軍事訓練を請け負った。

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