ウクライナ紛争が長期化しそうなウラ事情。世界の紛争地でカネを儲ける「会社」の正体

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2019年に発生したカルロス・ゴーン氏の国外逃亡事件を支援したことで、日本でも広く知られることとなった民間軍事会社(PMC)の存在。現在交戦中のウクライナ・ロシア両軍にもPMCにより多数の戦闘員が派遣されていると伝わりますが、PMCとはいかなる組織で、どのような活動実態を持つのでしょうか。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』では著者でジャーナリストの高野孟さんが、PMCを「冷戦後の世界の歪みにつけ込んで大きく膨れ上がったビジネス」とした上で、彼らがこれまで手掛けてきた「仕事」を詳しく紹介。さらに冷戦後に進んだ戦争の民営化ともいうべき状況が、ウクライナ戦争の長期化にも影響している可能性を指摘しています。

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※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2022年6月27日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

戦争を後押しする「民間軍事会社」の存在

ウクライナのゼレンスキー大統領は開戦直後から、自国民(の特に成人男性)に対しては「武器を取ってロシア軍と戦え」と呼びかけると同時に、広く世界に向かって「ウクライナ国際防衛軍団」に参加してウクライナ軍と共に戦う外国人義勇兵を募ってきた。

傭兵か義勇兵かの区別はあいまい

これはなかなか難しい法的な問題を孕んでいて、ウクライナ人の愛国者や外国人戦闘員がウクライナ正規軍の下に組み込まれていることを相手が識別できない形で市民に混じって戦った場合は、ロシア軍に一般市民に対する無差別攻撃の口実を与えることになり、現にそのような形で過剰な被害が出たケースも多いと推測できる。またウクライナ人にせよ外国人にせよ、非正規戦闘員と見做されれば戦時国際法による捕虜としての人道的な扱いを受けられない可能性があり、6月7日にロシア側が発表した英国人戦闘員3人に対する死刑判決がそれに当たる。

もちろんウクライナ政府は、外国人戦闘員たちは「義勇兵(volunteer)」として応募してきて、「無給で奉仕する」との誓約書に署名した上で軍制下の「ウクライナ国際防衛軍団」に組み入れられるので、正規兵として扱われるべきだと主張するが、ロシア側はそれを認めず、彼らは金銭で雇われた傭兵であって捕虜として扱われる権利を持たないと主張している。実際には、正規と非正規の区別はあいまいで、例えば米国はじめ世界各国に多数生まれている「民間軍事会社(PMC)」が、言わば人材紹介会社の業務として軍人経験者を集め、それを社員として派遣した場合、ウクライナの政府や軍とその個々の戦闘員との間では直接の金銭関係が生じないので、純粋な気持ちで応募した「志願兵」であるかに振る舞うことができる。

他方、ロシア側にもPMCがあり、3月12日付APなどが報じたところでは、「ワグネル・グループ」はシリア軍の現役兵士を対象に「ウクライナでの戦闘任務」に参加しないかと誘う広告を掲げて数千人を確保、シリア軍の給料の50倍に当たる月額3,000ドルを支払うと公言している。これも、形式的にはワグネルという民間会社と個々のシリア軍人との契約ではあるが、ロシア側も認めているように、傭兵であることは明白。だとすると、戦死してしまえばもちろんのこと、捕虜になっても命の保証は何もないことになるが、国家破綻状態のシリアでは、50倍の給料というのは命を賭けるのに十分な金額なのかもしれない。

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