相撲と脳震盪
思い返せば、昨年ほど、「相撲と脳震盪」との問題が取りざたされることはなかっただろう。
とくに、初場所の10日目、22枚目の湘南乃海と朝玉勢との一番は大きな波紋を呼んだ。立ち合いから両者が頭からぶつかり、湘南乃海が腰から崩れ落ちた。
立ち合いは行司から「待った」がかかり不成立となるが、しかし湘南乃海は立ち上がることはできない。明らかに脳震盪のような症状だった。
その後も湘南乃海は立ち上がろうとするが、ふらついて倒れ、仕切り直しができない。結局、両者をいったん、土俵下に下がらせ、審判団が土俵に上がり協議が行われる。
しばらくたったあと、湘南乃海自身が取り組みの続行に意思を示すも、協議の説明がないまま取り直しが行われた。このような説明不足の影響もあってか、大きな波紋を呼んだのだ。
相撲は、ラグビーやアメリカンフットボールと同じく、コンタクトスポーツでもある。
コンタクトスポーツとは、競技者との間で接触をともなう競技のこと。このうち、コンタクトスポーツはおもに、
- フルコンタクト
- セミコンタクト
- リミテッドコンタクト
- ノンコンタクト
の4段階に分別できる(*2)。
フルコントクトは、力を抑制せず相手選手に直接、接触する形式の競技で、ラグビーやアメリカンフットボール、レスリング、柔道が当てはまる。
セミコンタクトは、力を抑制したうえで、相手選手に直接、接触する形式の競技。カンフーやテコンドー、剣道が該当。
リミテッドコンタクトは、相手選手と接触をすることもあるが、しかし基本的は相手と距離を置く競技のことで、バスケットボールや野球、サッカーを指す。
ノンコンタクトは、相手選手と直接、接触しない競技であり、テニスや卓球、バドミントン、バレーボールなどが該当。
このうち、相撲は、フルコンタクトスポーツに相当する。
このようなフルコンタクトスポーツであるのにもかかわらず、しかし相撲の場合、これまでほかの競技のような脳震盪に関する規定やガイドラインは設けられてこなかった。
脳震盪は非常に危険な症状であり、最悪の場合は死に至る。ラグビーの場合、脳震盪の疑いのある選手は、その時点でプレーから離れるという規定がある。
さらに脳震盪であると正確に診断された場合には、軽傷でも1週間は試合にでることができない。
脳震盪は、それほど深刻な症状なのだ。
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