自分は何も変わらないまま?日本人による「ユニクロ」「無印」批判の的外れ

 

ユニクロが許せないと思うなら、ユニクロの服を買わなければいい。他者を批判するより、自分の行動を変えた方が余程効果的である。それでも足りなければ、不買運動をすればいい。

日本市場で流通している綿製品のほとんどは中国製であり、中国製品の7~8割には新疆綿が含まれている。したがって、本当に中国の人権弾圧に抗議して新疆綿製品を不買するならば、中国製の商品は全て避けるべきだ。

私個人の見解は以下の通りだ。中国の人権弾圧は許せないが、それを解決する手段としての新疆綿製品の輸入禁止は不適切である。新疆綿製品のボイコットは、中国政府にダメージを与えるより、現地で生活しているウイグル人の生活基盤を破壊することになると思うからだ。

それに、ユニクロの縫製工場は品質管理が厳しく、刑務所や収容所の中の縫製工場では対応できない。また、綿花栽培で奴隷労働が行われているという主張も証拠がない。特に、輸出向けの綿花畑では機械化が進んでおり、奴隷労働の入る余地はほとんどない。

勿論、国内向けの安い商品の生産工程の中で違法労働が行われているかもしれない。しかし、それらの多くは中国国内向けの商品である。中国政府を制裁するならば、日中国交の記念式典を中止するとか、中国共産党幹部の日本入国を禁止するとか、中国人留学生の補助金廃止とか、孔子学院廃止とか、方法はいろいろとあるだろう。

米国政府が新疆綿製品の輸入禁止したのは、米国が綿産国であることと関係している。どんな国も、自国が困るような経済制裁は行わない。正義が建前だが、実際は自国の国益で動いているのである。

3.歴史観、価値観の戦い

日本人が考える正義のイメージとは、互いに争わず、平和を維持することだろう。しかし、「弱肉強食の原理」「力の原理」で生きている人もいるし、そういう人が独裁者となっている国もある。ロシアのプーチン大統領は「国境は曖昧なものであり、常に変化している。力のある国が領土を拡大することは、歴史的にも当然のことだ」と言っている。

これに対し、「武力による現状変更は許せない」というのが西側諸国の立場だ。そういう西側諸国も歴史的にみれば、武力による現状変更を行ってきた国々だ。西側諸国はソ連崩壊後の秩序を重視しているが、プーチンは第二次世界大戦後の秩序を重視している。

もう少し意地悪な見方をすれば、ソ連崩壊で冷戦が終了した後、世界は中国を軸としたグローバリズムをひた走った。グローバリズムは国境を否定し、愛国主義を排除し、経済とお金の原理で世界を動かそうとした。強欲な市場経済はバブルを生み出し、そのバブルは崩壊しようとしている。そして、一部の個人に富が集中し、貧富の格差は拡大した。グローバリズムの推進は、ある意味で「経済秩序の破壊行為」といえるかもしれない。

こう考えていくと、単純に一方を正義、一方を悪と判断することはできなくなる。この問題は歴史観と価値観の違いに由来するものだ。現在、我々は歴史観、価値観を問われている。これは国家だけでなく、個人も同様だと思う。

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