米欧は中国に負ける。元イギリス首相が講演で口にした驚愕の内容

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全世界を巻き込み繰り広げられてきた米中による激しい覇権争奪戦ですが、その勝敗は既に決まったとの見方もあるようです。今回の無料メルマガ『田中宇の国際ニュース解説』では著者で国際情勢解説者の田中宇(たなか さかい)さんが、先日イギリスで行われた講演で同国元首相のトニー・ブレア氏がスピーチした内容の要旨5点を紹介するとともに、各々について詳細に解説。その上で、日本が今後進むべき道を考察しています。

多極化を認めつつも自滅する英米エスタブ

英国元首相でリベラル派のトニー・ブレアが7月17日、英米関係などを議論する英国のシンクタンク「ディッチリー財団」の年次会合で講演し、いくつか重要なことを述べた。私なりに解釈すると、ブレアは講演で以下の5点の要旨を語った。

(1)中央銀行群のQEによる経済歪曲、新型コロナへの対策(超愚策)、ウクライナ戦争による資源危機によって、西側(欧米日=米国側)経済が破綻し、市民の生活水準が大きく下がった。

(2)QEのバブル膨張が資産家だけを肥え太らせ、貧富格差が拡大した結果、欧米でポピュリズムが勃興し、SNSに扇動されて、醜悪で非生産的な政治対立が激化して、米国は内政混乱で覇権運営どころでなくなった。

Tony Blair’s Speech: After Ukraine, What Lessons Now for Western Leadership?

(3)米欧が衰退した半面、中国が経済台頭して米国と対等になり、近代史上初めて西洋と東洋が肩を並べる。中国は台頭しただけでなく、国家体制や市民生活のあり方について米国側と異なるシステムを構築して対抗してきている。今後の世界は2極化、もしくは(露イランインドなど他の非米大国も台頭して)多極化する。これは第2次大戦、冷戦終結と並ぶ歴史的大転換だが、前の2つが米国側(米英。民主自由体制)の勝利になったのと対照的に、今回の大転換は米国側の敗北、もしくは勝てるかどうか不明な状況になっており、かなりヤバい。

Tony Blair believes the West’s dominance is coming to an end. Here’s why

(4)米国側の諸国は団結し、非米側に流されていく国の増加を阻止する必要があるが、中国を敵視したり、米国側と中国側の経済を分離する策をとるべきでない。米国側は、中国の(非リベラルな)姿勢を改めさせる努力を続け、中国の動きを見据えつつ協調関係を続けねばならない。米国側は、中国が対抗姿勢を改めないままさらに台頭して世界の2極化・多極化が固定化した場合に、自分たちの民主自由体制をどう守るかを考えねばならない。

Era of Western dominance ending – Tony Blair

(5)米国側は、軍事費をもっと増やして(中露に対する)軍事的な優位を維持せねばならない。コロナやそれ以外の感染症に対する(インチキな)ワクチン開発と世界への普及を進めねばならない。米国は、共和党がコロナワクチン接種拒否を扇動する状況を改めねばならない。われわれは、人類に対する(インチキな)温暖化人為説の刷り込みを続けねばならない。

私が知る限り、英米の著名なエスタブ権威筋の指導者が、ここまで明確に米国側の覇権自滅と多極化、米国側が中国に負ける可能性が大きい点について述べたのは初めてだ。これまで米覇権の崩壊や多極化は、未来の懸念事項として表明されてきた。今回のブレアは、すでに米覇権は崩壊していて米中2極化や多極化が不可避だという論旨だ。英米エスタブの世界では、自分たちの文明が中国・非米側に負けると明言すると袋叩きにされる。だからブレアは「負けるか、もしくは勝てるか不明な状態」などと言っているが、彼の本音は多分「米国側は中国・非米側に負ける」ということだろう。

米国が英国を無力化する必要性

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