米欧は中国に負ける。元イギリス首相が講演で口にした驚愕の内容

 

ブレアの講演でもう一つすごい点は、バブル膨張策であるQEが金融資産保有者(金持ち)だけを肥え太らせ、インフレが貧困層を打撃して貧富格差が拡大した結果、ポピュリズム勃興などの政治混乱が拡大し、そこにコロナとウクライナによる経済収縮が加わって米国側の経済衰退と覇権低下が起きた、と言っていることだ。QEの愚策性を指摘するエスタブ人士がいなかった中で、これは珍しい(彼は直接QEという言葉を使わず、異例の通貨政策 unconventional monetary policy などと婉曲表現している。また彼は、リーマン危機への有効な対策はQEしかなかったとも言っている)。

Tony Blair’s Speech: After Ukraine, What Lessons Now for Western Leadership?

ブレアは1997-2007年に英国首相だった。それは2008年に起きたリーマン危機の直前までであり、債券金融システムの膨張によって英米金融覇権が繁栄していた最後の時代だった。ブレアが維持していた英米金融覇権は、その後リーマン危機で崩壊し、QEで不健全なかたちで延命させられた。ブレアはQEが始まった当初から、その不健全性を把握していたはずだ。ブレア政権の前半は、クリントンの米国と一緒に金融覇権を運営していた米英の最盛期であり、後半はブッシュの米国が911やイラク戦争でネオコン自滅的な過激な軍事戦略・単独覇権主義を振り回し、必死にそれについていく英国が米国と一緒に自滅し始める時代だった。リーマン危機後、金融システムも破綻への道をたどり出し、2017-2020年のトランプ政権で米国は覇権放棄や米中分離をやり始め、今のバイデンはウクライナで欧米の優位をさらに自滅させている。

米英を内側から崩壊させたい人々
アメリカの属国になったイギリス

ブレアは、新型コロナ対策とウクライナ戦争(対露制裁)が欧米の衰退を加速してとどめを刺したことを認めている。私の記事や他のオルトメディアでは、コロナ対策やウクライナ対露制裁が欧米を自滅させる超愚策であることが明言されてきたが、エスタブやマスコミはそうした見方を妄想扱いして無視してきた。ブレアは、コロナ対策やウクライナ対露制裁が「愚策」であると言っていないが、それらが欧米経済を決定的に破壊したことを認めている。QEも含め、米欧を崩壊させる策となったが、他に良い方策はなく、やむを得なかった、という評価なのか?その点について彼は何も言ってない。

This Proxy War Has No Exit Strategy
アングロサクソンを自滅させるコロナ危機

ブレアは、コロナ対策やウクライナ対露制裁が欧米経済を大きく破壊したと認めているのに、今後もコロナ対策や対露制裁をもっとやるべきだと言っている。ブレアは演説の中で、ロシアがいかに悪いかという歪曲話を延々と展開している。いろんなワクチンを開発して世界中で接種させるべきだとか、軽信しなくなった人々を激怒させることを言っている。温暖化人為説も、根拠薄弱なプロパガンダであり、無意味な化石燃料敵視が欧米経済を自滅させ、世界の石油ガス利権の65%が非米側の国営企業群の手に渡っていて今後ますます非米側の経済台頭と米国側の困窮を進ませてしまう。だがこれについてもブレアは、英米が温暖化対策の議論を主導し続けねばならないと言っている。ブレアは、米国側が壊滅しつつあると言いながら、今後の対策としてさらなる壊滅を引き起こす策を提案している。大馬鹿である。

Who Really Controls The World’s Oil Reserves?
制裁されるほど強くなるロシア非米側の金資源本位制

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