私もかつてタミールの虎に関わる和平調停に携わり、その結果、スリランカの外交安全保障のアドバイザーに任命されたこともあり、現在のスリランカでの混乱には胸を痛めると同時に、新たな希望の種も見ていますが、これまでの開発モデルとの大きな違いが「誰が一番コミットするか」という主体です。
これまでは国連、英国、アメリカ、欧州各国、そして日本がバックアップしてきましたが、今では良くも悪くも中国の圧倒的なプレゼンスがあり、完全に中国経済圏に組み入れられています。
今回、コロンボにいる友人から「欧米各国はスリランカを失った」と言われましたが、まさにその通りのことが起きていると思われます。
同様のことは、アラブの春が起きた“民主主義国家”チュニジアでも進展し、今や憲法学者で2019年に大統領に就いたサイード大統領の下、大統領権限を大幅に拡大する国民投票を通じて、権力の拡大が広がる形態は、いろいろな情報を下に分析を加えると、巧みな情報操作とリーダーの神格化などを通じて一種の独裁体制を築く中国共産党型とロシア・プーチン帝国型を採用して、リーダーシップとカリスマの構築を急いでいるように思われます。
これまでならここでアメリカが口先介入し、欧州も口うるさく民主主義の重要性を説いていましたが、今はウクライナ問題と国内情勢で手いっぱいで、チュニジアにまで手が回らない中、確実に中国に勢力圏を奪われていっています。
そしてその状況は同じアフリカで民衆の悲劇を拡大させており、エチオピアでは北部ティグレイ州との戦いが泥沼化し、政府軍によるティグレイ人のジェノサイドも噂される中、エチオピア政府とアビー首相を救うのは、大きな投資を行ってきた中国と、軍事的な支援を強化してきたロシア、そして教育と社会制度を充実させるために尽力してきたトルコです。
それぞれに“国内での民族問題”を抱える身としては、あくまでもリーダーレベルでは、権力に抗う反対派と戦うアビー首相へのシンパシーが大きいのでしょう。
かなり話がいろいろなところに飛んでしまいましたが、コロナの世界的なパンデミックを皮切りに世界が協調から分断に移行し始め、そこにウクライナへのロシアによる軍事侵攻をめぐるスタンスの異なりの鮮明化により、世界の分断と緊張、そして混乱の極まりはデフォルト化し始めました。
日本はどっちつかずでかつ目立たないけど、まじめな外交姿勢から、G7と歩みを共にするという方針転換を明確化し、昨今の国際情勢を泳ごうとしているように見えますが、今後、分断が明確化し、協調の機運がしぼんでいく国際社会において、どのような立ち位置を確保するのか。
しっかりと明確に方針を示し、確実に行動するための戦略を練り、確定する必要があると考えます。
その戦略とはどのようなものでしょうか?
私は私なりの答えを持っていますが、皆さんはどうお考えになるでしょうか?
以上、国際情勢の裏側でした。
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