二度と無いチャンスを放棄。安倍氏国葬からプーチンを排除した日本政府の愚

 

EU全体では、フォンデアライデン委員長が発表したように、「今後5年以内に域内の天然ガス利用を現在比で15%削減することに合意し、それによってロシアへの依存を下げる」という姿勢ですが、ノルドストリームに依存するドイツやイタリアなどは、長引くウクライナでの戦争とロシアへの制裁の悪影響と負担が結局自らに降りかかっていることに対する国民・消費者の不満が爆発しており、域内および同盟国間での結束よりも、自国の生存の重視に舵を切る必要がでてきたことで、今回のロシア・ガスプロムによるガス供給の“実質的な停止”という脅しは、見事に国内世論への働きかけに成功してしまっています。

先ほどの穀物価格の著しい高騰に加え、生活の糧となるエネルギーの供給が、ウクライナでの戦争とロシアに対する制裁の副作用として、じわりじわりと、しかしずっしりと家計に響きだして、対ウクライナへのシンパシーは口にするものの、まずは自分たちの生活が成り立たないといけないという内向きな感情と危機感にすり替わってきています。

この国民・消費者の内向きな感情、そしてウクライナ離れ、そして政府の方針への反感の増大に対して、ドイツのショルツ政権も、フランスのマクロン大統領も十分に対応できていません。

そしてこの2人とキーウを訪問したイタリアのドラギ首相(もう元首相でしょうか)については、国内の5つ星運動の支持を失い、ついに首相の座を降りることになってしまいました。イタリアについては、元々政権運営の安定性に不安がありましたが、今後、誰が首相になっても連立政権になることは避けられず、これまでのようにウクライナにシンパシーを示すような方針が維持できる見込みは非常に低いと考えます。

これでウクライナはドラギ首相という盟友を失うことになりましたが、“ウクライナの友人”で、かつ権力の座から引きずり降ろされたのが、ジョンソン英首相です。

ウクライナの人たちからは友人と評価されていますが、実際には自らと周辺の数々のスキャンダルへの追及をかわすために、ウクライナでの戦争と、それに対する英国のコミットメントを用い、国民感情と議会の感情を操作しようとしたようですが長続きせず、結局、身内から引きずり降ろされる羽目になりました。

次に首相になるだろうと思われる候補者お二人のどちらが選出されても、十中八九、現在のジョンソン流のウクライナへのコミットメントが保たれることはないと思われます。

かといって英国がロシア・ウクライナ間の戦争から手を退くかと言えばとんでもなく、直接的な武力紛争という形式ではなく、情報戦という、英国が旧ユーゴスラビア、そしてコソボでも用いたお得意の手段を通じて国際的な反プーチン・反ロシア世論を形成しようとしています。

それが最近、至る所でMI6の局長が様々なAnti-ロシアの情報に言及しているのが一例です。

例えば今週に入って「ロシアはドンバス地方での優位性を保てなくなってきている」と言ってみたり、時にはプーチン大統領の重病説を流し、ポスト・プーチンの有力候補の“紹介”をしてみたりして、ロシア国内外の世論と、今回の戦争・紛争・侵略に対する意識を変えようとしています。

ただし、実際の戦況がどうかは伝えずに。

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