二度と無いチャンスを放棄。安倍氏国葬からプーチンを排除した日本政府の愚

smd20220729
 

ロシアの軍事侵攻開始から5ヶ月が経過するも、未だ混迷が続くウクライナ情勢。その対応等を巡り、世界に分断と混乱が広がりつつあるようです。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、G7諸国の行き過ぎた反ロシア姿勢が他国からの反発を招いている現実を紹介。さらに日本政府に対しては、安倍元首相の国葬からのプーチン大統領締め出しで、直接的にロシアに働きかける機会を放棄した姿勢を疑問視するとともに、中国、ロシア、トルコが影響力を増大させている国際社会において、どのような立ち位置を確保するのかを確定させる必要性を訴えています。

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聞こえなくなったウクライナ戦況。それでも世界を襲う「混乱の渦」と「複雑化」する国際情勢

ウクライナでの戦争が現在進行形である中、今週の情報交換や議論の中で、2月24日以来、恐らく初めて【ウクライナの惨状】や【戦況】の話が出てこない週になりました。

とはいえ、もちろん間接的には“ウクライナの問題”は関係しています。

その一例が【ロシア・ウクライナ・UN・トルコの4か国を“当事者”にした合意】です。

これは黒海におけるロシア艦隊による海上封鎖によってウクライナからの穀物(特に小麦)の輸出が滞っている問題を解決しようとする協議で、トルコ政府による仲介の一例です。

内容の詳細についてはニュースなどを通じてご存じかと思いますのでここでは触れませんが、今回の“合意”を前向きと捉えるかは微妙ではないかと考えます。

その一因は【合意がロシアとウクライナの間で交わされた直接合意ではない】ということです。

これはそれぞれがトルコとUNを相手に締結した内容であり、双方の合意ではないところに落とし穴が存在します。

その証拠に、合意締結後、ロシア軍が黒海に面し、そしてウクライナからの物資が運び出される拠点の一つであるオデーサ港を攻撃したことがあります。

ロシア側も、今回は珍しく攻撃を加えたことを認めましたが、その理由として挙げた内容に今回の合意の危なさが見えた気がします。

それは【黒海の運行の安全を損ねているのは、ロシア軍による封鎖ではなく、そもそもウクライナが撒いた機雷の存在であるのに、そのことに触れられておらず、根本的な問題が解決されていないこと】と【ウクライナからの物資の輸送に対する安全確保について触れられている半面、ロシアからの物資の輸送の安全確保については約束に入らなかったこと】そして、【オデーサ港が欧米諸国からの物資輸送の拠点になる危険があることが分かったから】という理由でした。

3つ目については、その真偽のほどはわかりませんが、トルコ政府の友人も認めている通り、「この合意の当事者に欧米諸国が入っておらず、その内容を必ずしも評価しているわけではないことから、ロシア政府による懸念を一概に妄想と扱うことは適切ではない」と思われます。

とはいえ、攻撃が正当化されるかと言えば、それはまた別次元のお話だと考えます。

この話し合いと並行して、ロシアが起こした欧州各国への揺さぶりと脅しが「ノルドストリームによるロシアから欧州への天然ガスの供給を通常の20%にまで絞る」という発表です。

表向きは【カナダで修理中だったGE製の部品の修理が、欧米による経済制裁で遅れ、その輸送がままならないこと】と【パイプライン稼働再開にあたり、テクニカルな問題が起きた】というものですが、どこまでそれが本当かは分かりません。

恐らく何らかのテクニカルな問題は発生したのだと思うのですが、主因は【欧米による制裁への抗議】と【欧州のエネルギー安全保障の生命線を今でもロシアが掌握していることを思い知らせたかった】ことだと考えます。

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