二度と無いチャンスを放棄。安倍氏国葬からプーチンを排除した日本政府の愚

 

そして今回に入ってロシアへの直接的な働きかけ・揺さぶりの一環として、アメリカのCIAと国務省の協力を得て「ブリンケン国務長官とラブロフ外相の電話会談が開催される」という情報を流しました。アメリカ側は27日・28日にでも開催されるといったものの、ロシア外務省は寝耳に水で、「そのようなオファーは受けていないし、現時点でアメリカと話し合うことはない」と否定していますが、欧米メディアはすでに“この外相会談が行われるもの”として報じることで、この“外相会談”をセッティングしようとしています。

国際世論の位置を確かめ、ロシアの出方を探るための一種の観測気球的な情報戦略ですが、仮にこの外相会談が実現した場合、「何を議論するのだろう」という疑問以上に気になるのが、「当事者であるウクライナ政府が全く蚊帳の外に置かれていて、大国同士でウクライナの運命を決めるのではないか」というディールの存在です。

アメリカとしては、先の“黒海マター”から外され、EUは同盟国として足並みを揃えているはずが、対ロで独自の動き(特に独仏イタリア)を取り、あわよくば中国とも手を組んで、ロシアと手打ちをしようとしている現状に危機感を覚えたのか、2月24日以降拒んできたロシアとの直接対話を行うことで、再度、表舞台のコンダクターに返り咲こうという狙いも透けて見えます。

ウクライナへのNATOを通じた軍事的な支援を約束したものの、欧州各国がその約束内容を履行するのに遅れていることもあり、アメリカからの支援が規模で突出している状況は、アメリカ国内で評価されるどころか、今では非難の材料にされていることから、幕引きの主導権を取ることで国内向けのアピール材料を確保したいとの狙いですが、プーチン大統領の下で外務相として仕え続け、まさにロシア外交の顔でもあるラブロフ外相の百戦錬磨の術に、ブリンケン国務長官がどこまで対応しきれるか、実に興味深いです。

欧米諸国は個別にこのような情報戦を仕掛けていますが、集団としての情報戦、そして仲間づくりは決して成功していません。

今、G7諸国はG20の各閣僚級会合の場でロシアはずしを画策し、インドやブラジル、アルゼンチン、議長国インドネシア、サウジアラビア王国などを欧米側に付けようとしていますが、逆にG20内の分断を明確にし、G20を無力化し、そして行き過ぎた反ロシア姿勢の徹底が、自らの孤立を招く結果になっていると思われます。

特に財務大臣会合などで行われるG7各国による対ロボイコットの動きは、他のG20諸国の反感を買い、多くは“G7の奢り”とまで非難する結果を招いています。

それぞれロシアによるウクライナへの軍事侵攻については手段として間違えていると批判するものの、一方的にロシアを批判し、無視し、制裁を課すというやり方には与することはできないとの姿勢を、今までになく鮮明にすることに繋がりました。

そして一番まずい状況なのが、G20の各会合で“通常”作られる【共同声明】を作らせないというG7各国の動きで、これは議長国インドネシアの顔に泥を塗ることになり、面子を重んじるアジア型の協議方式に反する暴挙だと取られています。そしてこの非難の矛先は、実は“同じアジア”の日本に向けられていると言われています。

今後の対アジア外交方針を考える際、戦後、蓄積してきたアジアにおける日本としての信頼を失うことがあってはいけない点に注意すべきでしょう。

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