プーチンの狂気を呼び覚ます、ウクライナ「クリミア攻撃」の最悪シナリオ

 

観測気球・情報操作という点で他の目だった内容があるとすれば、【ロシアもよほど補給に困難がでたのか、ついに北朝鮮やイランにも支援を要請したらしい】というものや【先のプーチン大統領とエルドアン大統領との会談の際、プーチン大統領が待たされたのは、力の逆転が起こっている】、そして極めつけは【プーチン大統領の体調悪化説】ですが、どれもどうも観測気球だったみたいです。

健康不安については、CIAが「プーチン大統領はいたって健康」と報告しましたし、エルドアン大統領とトルコについては、トルコ政府関係者によると、「そんなこと恐ろしくて言えない。エルドアン大統領はアメリカを全然怖がっていないが、プーチン大統領のことは本気で怖がっているから」とのことでした。

話が逸れてしまいましたが、ウクライナ軍とその仲間たちがこの時点でクリミア半島に手を出したのは中長期的にはあまりよろしくなかったかもしれません。

プーチン大統領にとってはクリミア半島とその併合は、2014年以降のサクセスストーリーの典型例に挙げられており、強く国民を見捨てないリーダーとしてのイメージの象徴となるケースと言われているため、ここに刃を公然と向けることは、ロシアによる反応のエスカレーションを招く恐れがあります。

すでにメドベージェフ元大統領が「クリミア半島を触るものには破滅が齎される」と何とも不気味な脅しをしていますが、これもあながち冗談では済まないかもしれません。

それは、ロシアはほかの核保有国とは違い、あくまでも軍事政策の一環として、作戦のために戦術核兵器を用いるという特徴から、過度にプーチン大統領を刺激し、面子をつぶすような場合、戦況次第では使用もあり得ると考えられるからです。

直ぐには起こらないと信じていますが、プーチン大統領は何をするかわかりませんから。

ここまでいろいろなアングルからウクライナでの戦争と今後の見通しなどについて、若干激しくお話ししてきましたが、皆さん、この話が日本とは無関係だとは、まさかお考えではないですよね?

核兵器の使用については、もしかしたら大きな懸念はないと思われるかもしれませんが、同じ“核”でも原子力発電所となると話はどうでしょうか?

実際に今回、ロシアとウクライナの紛争において、ザポリージャ原発は攻撃の対象となっていますし、ライフライン(水道、電気、ガスなど)施設への攻撃も厭わない状況です。

日本がロシアとウクライナの戦争の影響を直接的に受けることは、シベリアのロシア軍部隊の動きという点を除くと、ほぼないと考えますが、今、ウクライナでの戦争で起きていることはそのまま、台湾有事の際には日本で起きる可能性があります。

中台衝突が何らかの形で起きてしまった場合、その影響から日本は逃れることはできません。先のペロシ氏の訪台を受けて中国人民解放軍が行った実戦的な軍事演習では、“日本のEEZ”に弾道ミサイルが着弾するという事態もあったことからも、台湾有事の際には、日本は防衛権発動の必要性が生じる事態であると考えられます。

1996年の台湾有事の際には、まだ中国の軍事力が周辺国への攻撃を可能にし、多方面で戦闘を遂行する能力がなかったため、大きな問題としてクローズアップされませんでしたが、それから26年経った今、中国の軍事力は質・量ともに格段に向上していますので、日本が台湾有事に巻き込まれて攻撃対象になるというシナリオは、もう想像上のものではないと言えます。

日本自体が敵地攻撃能力を持って攻撃するという事態は想定しないとしても、“流れ弾”なのか“意図的に撃たれたもの”かは別として、飛んでくるミサイルなどに対していかに国土を防衛するのかについて具体的な策を練り、そして訓練をしておかなくてはならないでしょう。

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