プーチンの狂気を呼び覚ます、ウクライナ「クリミア攻撃」の最悪シナリオ

 

随分前に国連事務総長の役割は、【モラルリーダーとして振舞い、最後の調停者(ん?誰かのタイトルと似ていますが)として中立の立場を貫きつつ、紛争の解決に尽力すること】と描写しましたが、先代の事務総長同様、どこに中立性があるのでしょうか?

前回の遅すぎた訪問ではモスクワとキーウを訪れていますが、今回はウクライナだけで、プーチン大統領との“協議”は予定されていません。国連安全保障理事会常任理事国で、今回の戦争の当事者でもあるロシアと会わずして、何をするつもりなのでしょうか?

ロシア側の反応が注目されますが、本件については沈黙を保ち、無視していますが、今後、この事例を何らかのカードとしてロシアが使ってくる可能性は否定できないでしょう。

もう一つの事例がクリミア半島で起きている攻防です。このところクリミア半島のロシア軍施設で大爆発が起きており、ロシアとウクライナの間での緊張が高まっています、

ジャンコイの弾薬庫が爆破され、変電所での火災も報じられる中、ここでも【誰による仕業か】という責任のなすりつけあいが起きています。

ただこれはほぼ確実にウクライナ側による攻撃だと思われ、見事に大統領府の顧問(よくしゃべり、リークすることで有名)もウクライナによる仕業であることに言及していることから、恐らくそうだと思われますが、これがまた大きな問題に発展する火種となるのではないかと恐れています。

いろいろな情報を総合的に分析してみると、実行者は恐らく英国に訓練されたウクライナ軍の特殊部隊で、ロシアの補給網と拠点にダメージを与えることで、ロシアに対して物理的なショックのみならず、心理的なショックも与えて、全体の戦況の巻き返しを狙ったものだと思われます。

しかし、この攻撃は、ロシア側からの強力な報復行動につながる恐れを秘めています。

米国からのハイマースの投入、英国やフランス、ドイツ、デンマークなどからの武器供与などを受けて、ウクライナがロシア軍に対して巻き返しているという分析もありますが、その裏で、大きな損失を被ったロシアは明らかに戦力の増強に努めているという情報も入ってきています。

例えば、ドンバス地方にいるロシア軍部隊を南部に再配置する動きが出ていますし、これまで投入してこなかった武力の投入も着々と準備されているようです。シベリアからの再配置までは行わないようですが、数を補えるような装備面・戦闘力面での大きな補強と言われています。

個人的には、これにより、ロシア軍とウクライナ軍(とその仲間たち)の間で反撃と反転攻勢が繰り返されることになっても、勝敗を決するような決定的な行動をどちらかが取ることは、少なくとも年内はないだろうと見ています。

ちなみに戦況は膠着しておらず、常に流動的ですが、双方ともに長期戦になると覚悟をしはじめ、そのための体制に変わりつつあると見ています。

これは実は紛争調停の側面からはあまりよくない状況です。反転攻勢が続き、双方とも、自軍が有利だとアピールしている状況では、停戦に向けた話し合いのテーブルに着くという心理的な基盤が存在しないからです。

英国の情報筋によるお決まりの観測気球で【ロシアが内々に戦争を終わらせたがっている】とのニュースを流していますが、これは事実ではなく、あくまでもロシア軍の士気を下げたり混乱させたりするための道具であるとのコメントを、その英国から受けましたので、ロシアもやる気満々と言えるでしょう。

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