例えば、具体的に「首相および防衛大臣はいつ自衛隊に対して防衛出動を命令するのか」という問題や「米軍からの協力要請に対して、どれだけ迅速に対応するのか?いかに対応するのか?」といった内容を想定し、準備しておく必要があります。
一旦決定が下されれば、実戦に臨むのは自衛隊ですが、決断は政治が行わなくてはなりませんが、今の政治にその準備はできているでしょうか?
防災訓練などは定期的に行われており、首相官邸に緊急対策本部を立てて対応するという具体的な演習がありますが、軍事的な危機が迫った場合に対する有事対応の鍛錬と専門の軍事的な知識の養成が必要で、そのためには自衛隊との有事想定の演習が不可欠になります。
現在の国会議員の顔ぶれを見てみた時、元自衛隊員の方を除き、“安全保障の専門家”はほぼ実践に基づかない机上の知識を有するだけで、有事の際、あまり役には立ちません。
特に原発やインフラへの攻撃が加えられた際、政府だけで対応できるかと言えばそうではなく、原発やインフラを保有する民間企業との密接な協力も必要となりますが、そのような体制は、2011年の東日本大震災と福島第一原発事故以降、どのレベルまで構築されているでしょうか?
日米安保条約に基づき、確かに米軍は助けてくれるでしょうし、自衛隊も協力して対応できる体制はあるかと思いますが、では100%それに頼り切っていて、十分安全か?と考えたら、ちょっと安心できないような気がします。
先週、ちょっと激し目に書いたように【核兵器は結局使用できない兵器であることが分かった】としても、もし日本にある54基(すでに廃炉が決まっている21基と福島第一原子力発電所含む)への攻撃が加えられたら、兵器とは技術的な違いと有事の際の威力の差はありますが、事故・攻撃の“後遺症”がどれほど長い年月にわたって人々を苦しめうるかは、異論はないかと思います。
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その攻撃とやらが、台湾有事の際に中国によって加えられるのか、それともロシアによるものなのか?それとも北朝鮮によるものなのか?
それは分かりませんが、日本が四方八方を核保有国に囲まれ、アメリカを除けば、決して友好国とは言えないという、異常な安全保障環境に置かれていることを理解した上で、神頼み・アメリカ頼みではなく、具体的に自身がどう対応するのかをクリアに想定しておく必要があると考えます。
ロシアとウクライナが攻防を繰り広げる戦争は残念ながら長期化しますし、台湾情勢も緊迫の度合いが高まっていてもすぐに有事に発展しないだろうとの楽観論も存在しますが、大きく変わってしまった国際情勢の中、私たちも自身の安全保障問題を真剣に考え、行動しなくてはならない時期に来たのだと思います。
考えすぎでしょうか?本当にそう願います。
以上、国際情勢の裏側でした。
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