プーチンの狂気を呼び覚ます、ウクライナ「クリミア攻撃」の最悪シナリオ

 

ここで気をつけなくてはいけないのは、ロシア軍が行う一般人への攻撃はもちろん許されざる蛮行として最大限の非難の対象となりますが、同様のことをロシア系住民に対して行っているウクライナ側の行動は、ただの“抗戦”で片づけられてよいのか?という点です。

「攻め込まれ、母国が侵されているのだから戦うのは当然」というのは100%尊重しますが、ロシア軍と同じことをして、それを抗戦の名の下に正当化するのであれば、そこには大きな疑問が生じます。

最近はあまりニュースでも見られませんが、日本のメディアはよく、ウクライナの女性たちが銃やロケット砲を構え発射するシーンを、まるで聖戦に臨む存在のように描く演出をしていましたが、それらのロケット砲の着弾点は、報じられるような軍事施設やロシア軍の戦車ばかりではなく、ちゃんとロシア系の一般市民の自宅や学校・病院だったりすることを見逃されているような違和感を抱きます。

別の報道では、ウクライナに対して「早く降伏して国民の生命を守ることが必要だ」と主張する政治家(元含む)や専門家の意見も耳にしますが、正直、この方たちは“戦争の正体”をご存じではないのだなと感じます。

戦争の正体とは「もし抗戦せずに降伏してしまった暁には、いろいろな意味でその国や社会、そして国民は皆殺しにされる」ということです。

言語が失われ、宗教・信教の自由が侵され、歴史が書き換えられ、国籍を失い、場合によっては物理的に抹殺されるというケースは、歴史上これまで何度も見てきましたし、現在も悲劇は続いています。

その最たる例はクルド人やロヒンギャ族、ロマ族などへの国家的な排除や、コソボや北マケドニアで存在するアルバニア系の住民に対する抑圧などを挙げることが出来ます。

それが今、ウクライナで起こっていると言えますが、そのような抑圧に対して抵抗し、自らのアイデンティティと権利のために、そして家族のために命を賭して戦う姿勢には強いシンパシーを覚えます。

しかし、その抵抗も方向性を間違えると、自国を蹂躙してきた隣国や大国の眠れる狂気を呼び起こすこともあります。

特に紛争が当事者間の戦いというレベルを超えて、国際化している場合は。

今週、それがウクライナで起きているかもしれません。

一つ目は、欧州最大の原発であるザポロージェ(ザポリージャ)原発を舞台に行われているロシア軍とウクライナ軍の対峙・攻防です。

ロシア軍が原発を占拠し、川を挟んでウクライナ軍が対峙し、散発的な戦闘がおきていますが、その際に放射性廃棄物の貯蔵施設近くにロケット弾が着弾したらしいというインシデントや、原子炉近くでの爆発と火災といった別の懸念されるべき事件が起きています。

ロシア・ウクライナ双方が互いに相手の仕業だと非難していますが、実際に誰がそのような愚行を行っているのか(executed by whom?)は分かりません。

原発を戦場にするというのは国際法違反ですが、その違反の非難の矛先は、ロシアはもちろん、止むを得なかったと判断しても、原発を対峙の場所に選んでしまったウクライナ側にも非難の矛先は向けられます。

もしそのように“国際社会”(すでに私はこれが何を意味するのか分からなくなってきましたが)が評価するのであればまだしも、実際には何が起きているでしょうか?

IAEAにおいて複数国がロシアを名指しして非難し、即時退去を強く要請し、国連事務総長はウクライナ西部の都市リビウを訪問して、ウクライナとの連帯を示すという行動に出てしまいました。

グティエレス国連事務総長については、リビウ訪問の目的を「ゼレンスキー大統領とトルコのエルドアン大統領と会い、先日合意した穀物輸出のスムーズな実施のために協議する」としていますが、別途、ゼレンスキー大統領と単独で会い、“国際社会の支援”をゼレンスキー大統領に伝えるそうです。

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