卵子凍結と精子バンク利用は「普通」の衝撃。NYシングルマザー出産ウラ事情

 

今もパークアベニューにある有名証券会社で働いているのだとか。僕の自宅からも、オフィスからも歩いて行ける距離でした。彼女はインテリ層でもあります。仕事が楽しくキャリアを積んでいく中、いつかいつかと思っていた出産も、いつのまにか時が経ち、気づけば40を過ぎていた。なんとなく諦めかけていた時、子宮頸癌が発覚。

「アブノーマルセルがあります」とドクターに言われた時は、さすがに色々考えた。まだ初期だったので、手術で頸部の悪い細胞だけレーザー手術で取り除くことができた。その際、日本人のドクターに「結婚してないですよね。卵子は凍結してますか?」そう聞かれたのが、2020年の末。

2回目の手術が失敗したら、子宮を取り除くことになる。「自分の女性としての機能をこのまま使わないと自覚したら、怖くなって」。今は知らないが、日本だと40を過ぎれば卵子凍結自体できないらしい。会社も凍結自体には保険が効かないが、ホルモン注射などの不妊治療はカバーしてくれるという。「せっかく、人工授精に対してハードルの低い国にいるのだから」と決心した。卵子凍結をして、いつかの為に冷凍保管しておくのはニューヨークでは一般的だ。

「ニューヨークでは若い世代すら卵子凍結は珍しくはないの。キャリア重視の街だけに仕事に集中したい人が多い。それに日本だと、医者にピルくださいとお願いするのも躊躇(ためら)われるけど、こっちだとバーのカウンターに普通に市から配られたコンドームが置いてあるじゃない。セックスに対して日本よりずっとオープンだと思う」

で、卵子は凍結しても、精子がない。そんな女性のための精子バンクドナーサイトもこの街では充実している。精子を提供すネット上のサービスだ。日本ではまだ精子の売買が許可されていない。日本では、そもそも妊娠はパートナーの精子で、というのが社会的常識らしい。ゲイの結婚も認められていない。

サイトを覗くと、これでもかというほど精子を提供している男性のリストが出てくる。人種、肌の色、目の色、髪の色もリストされている。まるで出会い系サイトみたいだな!そう言う僕に「まさにそう!」と笑う。「ただし、違うのは今現在の顔写真は載ってないの。掲載されているのは、その人の子供の頃の顔写真」で、もう数百ドル払えば、今現在の成人になった顔写真も見れるのだとか。

出会い系サイトというより、アダルト向け動画のサイトみたいだな。サンプルだけ見せてここから先は有料、みたいな。「怒られるよ、真面目なサイトなんだから」他にも運営者からの「彼が最初に訪ねて来た時は、クリニックはパーっと明るいオーラに包まれたわ」といったお勧めコメントも書かれている。お見合いババアみたいだな。「だから、怒られるよって。本当に多くの人を助けてるんだから」

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