わかりやすく伝統陶芸を例に持ってきましたが、どんな仕事でも同じです。
「オレ、ただのバーバー(理髪店)なんだけど」ー。
日本の理髪師の技術は世界トップクラスと聞きます。以前、ニューヨークで成功しているカリスマ美容師に話を聞いたら、ハサミの技術は日本の散髪屋のおっちゃんには敵わないと言っていました。トレンドを把握、もしくは作り出すのが僕たちの仕事で、職人技なら近所の理髪店の方が上だ、と。
世界中の人間がおしゃれヘアーにしたいわけじゃない。あなたのカット技術は、ニューヨーカーが求めている「個性」です。
「僕、ただの整骨院勤務なんすけど」ー。
日本の整体理論はアジア1位と聞いたことがあります。ということは世界一です。少なくともトップクラスです。日々の仕事を極めていけば、世界の人に求められる整体技術を持った人になる。「オレ、曲がったことが嫌いなんっすよねー!」とアピールするより曲がった骨を治す技術の方が、ずっと需要があります。世界に求められる「個性」です。
「小学校の教師なので、何かを作ったり、サービスしたりするわけじゃないんですけど…」
僕の友人に、ニューヨークの大学教授がいます。少ない日本人教授は生徒に人気があるのだとか。彼いわく「やっぱり日本人の気質ってやさしいからさ、ダメな生徒にも根気強く付き合っちゃうんだよー。最後までやさしく面倒見てくれるイメージがあるんじゃないかな、生徒側にも」
ひとりひとりの生徒に向き合って、我慢強く成長を見届ける。どうやら、世界的に見たら結構な「個性」だそうです。そんな個性、普通の仕事に就いている人には身につけられない。
「アタシ、ただの主婦なんですけど…」。
主婦業、頑張ってください。日本のHouse Wifeは僕もインタビューしたことのある栗原はるみさんらのおかげで世界的にも尊敬される対象になってきました。きめ細やかな気配りは、アメリカの対価をもらうサービス業でも太刀打ちできません。それだけで世界的に見れば「個性」です。いま、アタシがやっていることは世界トップクラスの仕事なのだと思えば、洗い物もまた違った意味が出てきます。
僕の高校時代、『東京ラブストーリー』というトレンディドラマが流行りました(トレンディドラマだって 笑)。確か月曜9時だったと記憶しています。火曜日のクラスの女子の大半が主人公「赤名リカ」の口調になってました。もちろんドラマの1クールの間だけ、です。自称・赤名リカは、結局、誰も赤名リカではなかった。
自身の紐づいている仕事にこそ、個性がでます。
口頭上でインスタントに身に纏う「個性」より、今の生業(なりわい)を本気で極めてみよう。
貴方の仕事は、きっと世界が驚くほどの「個性」を発揮する。
(メルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』2022年8月23日号より一部抜粋。続きはご登録の上、お楽しみください。初月無料です)
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