地方行政にまで浸透。日本国が統一教会と手を切ることは可能か?

2022.08.31
 

さらに、「ピースロード」という旧統一教会の関連団体「天宙平和連合」が共催に名を連ねて、全国各地で実施しているイベントがある。世界平和と日韓友好を訴える名目で、若者らが自転車で走行するイベントである。

13年に旧統一教会の創始者・文鮮明の死去1年を追慕する記念行事の1つとして企画された「ピースバイク」が起源で、15年以降、名称を「ピースロード」と改称している。実行委員会には、地元選出の国会議員や地方議員が参加し、さまざまな都道府県、市町村が後援していたことが明らかになっている。

旧統一教会は、地方ごとの実行委員会に地元選出の国会・地方議員を取り込んで実行委員長、副委員長、顧問といった役職で参加させる。自治体に後援を要請することで、公益イベントであるかのようなお墨付きを得て、教団色を薄めることに成功しているのだ。

このように、旧統一教会は国会議員に対する選挙協力にとどまらず、さまざまな形で国政や地方政治・行政に深くかかわっていることが明らかになった。国会・地方議員、首長、自治体は旧統一教会から票や寄付金、ボランティアを得て、旧統一教会は「社会的信用」を勝ち取るというギブ・アンド・テイクの関係ができあがっている。

現在、メディアは連日、政治・行政と旧統一教会の関係を報道し、厳しく批判している。私も、信教の自由は守られるべきだが、旧統一教会という「反社会的行動」を行ってきたことが明らかな団体から支援を得て、その団体の活動を事実上助けてきた政党・政治家には「道義的責任」があり、関係を断ち切るべきだと主張してきた。

だが、現実的にこれだけ広く深く政治・行政に食い込んだ団体との関係を切ることは可能なのかということだ。確かに、多数の被害者が出ており、その救済は最優先されるべきだ。一方で、旧統一教会の教義を純粋に信じて、政治・行政やボランティアの活動に一生懸命取り組み、社会的な信用を得てきた人たちも多数いるのだ。彼らを、旧統一教会の信者だからといって、一律に排除できるのかといえば、無理だろう。

また、信者であることを隠して生活している人も多い。政治・行政の側で教団と関係を断ち切ろうとしても、信者であることを隠している人たちまで探し出して排除しようとするのは、現実的に無理だ。プライバシーや人権の侵害になるし、宗教弾圧につながる危険がある。なによりも、自由民主主義社会は政治の側が教団との関係を絶とうとしても、信者が勝手にある政治家を応援し、選挙で一票を投じることを止めることはできない。

ゆえに、政治・行政が旧統一教会との関係を絶つべきだという主張は、現実的ではないように思う。唯一可能なことは、旧統一教会がいわゆる「霊感商法」や信者が破産するほどの寄付を求めるような「反社会的な行動」を完全にやめて、普通の宗教法人となることを要求することだろう。

普通の宗教法人であれば、政治・行政とかかわることやボランティア活動などで社会に参加することは、特に問題はない。創価学会など旧統一教会よりはるかに規模の大きな宗教団体が政治・行政にかかわっているが、政教分離という観点からみても、特に問題視されていないのだ。

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