サラリーマン大家は本当にトク?元国税調査官が教えるカラクリと落とし穴

 

減価償却、会計の初心者の方は知らない方も多いでしょう。でも基本的な仕組みは非常に簡単です。減価償却というのは、一年以上使えるもので10万円以上の高額なものを事業のために購入した場合、その耐用年数に応じて、購入費用を各年に案分して費用化するという制度です。

たとえば、耐用年数10年で、200万円のものを買った場合、最初の1年間に全部費用として計上するのではなく、毎年20万円ずつ10年間にわたって費用化していくのです。本当はもう少し複雑な計算があるのですが、ざっくり言えばこういうことです。不動産経営を行うために、マンションやアパートを購入した場合、その建物も当然、減価償却をすることになります。

減価償却というのは、実際に費用として、お金が出て行くわけではありません。なのに、帳簿上だけ費用として計上されていくわけです。

また家族を不動産事業に従事させていることにして、家族に給料を払ったりすることもできます。これは、おおむね10部屋以上の貸室があるなど一定の条件が必要ですが、普通に不動産経営をしていれば特に難しいことではありません。

「儲かっているのに赤字」のカラクリ

実質的には利益が出ているのに、帳簿上は赤字になるというカラクリ、会計初心者の方には、若干、わかりにくいところですね。ここで実例を挙げて、ご説明しましょう。木造モルタル建てのアパート(10部屋)を8000万円で30年のローンを組んで建てた人がいるとします(説明の便宜上、土地は最初から持っていたことにします)。

家賃収入は、ひと部屋あたり月5万円、年間60万円。10部屋とも一年間埋まっていたら600万円の収入になるというわけです。部屋は年間8割程度埋まっていたとしまして年間収入が480万円ということになります。

で、減価償却の話です。この建物の資産価値は8千万円です。木造モルタルの建物は耐用年数が20年なので1年間に5%ずつ減価償却していくことになります。ということは8千万円×5%で400万円です。つまり、この400万円を減価償却費として計上できるのです。さらに、この人はローンを組んでアパートを建てていますから、その支払利子も経費として計上できます。利率が2%として、8千万円×2%で160万円。この160万円が支払利子として計上できます。減価償却費400万円に支払利子160万円を足せば560万円です。この時点ですでに家賃の年間収入480万円を大きく超えています。

これに、家族に給料を払ったり、不動産屋への支払いとか、建物の修繕費とか、様々な雑費とかの経費が全部で200万円あったとします。すると経費は全部で760万円となり280万円の赤字になるのです。この280万円を給料から差し引くことができるのです。年収500万円であれば、差し引き220万円となります。ざっくり見て、税金は3分の1から4分の1程度になります。

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