金正恩総書記のメンツ丸つぶれ。発熱患者発生で粛清はあるのか?

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新型コロナ流入を認めてから電光石火の80日で新規発熱患者ゼロを発表し、「最大非常防疫戦の勝利」を宣言した北朝鮮。しかし、金正恩総書記のメンツが丸つぶれとなる事態が起こってしまったようです。今回のメルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』では、宮塚コリア研究所代表の宮塚利雄さんが、勝利宣言時の国をあげての自画自賛と総書記礼賛を振り返り、新たな発熱患者を発生させてしまった地域の関係者の身を案じています。

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新型コロナ撲滅のはずが再確認で金正恩のメンツ丸つぶれ

8月5日号で北朝鮮が80日ぶりにコロナ感染者がゼロになったと発表したことを書いたが、北朝鮮メディアは8月25日、北朝鮮北部の両江道で23日に新型コロナウイルスの感染が疑われる発熱患者が4人確認され、当局が感染者が出た地域を封鎖し、PCR検査などを行っていると伝えた。

北朝鮮当局は7月29日以降感染者は1人もいなくなったと説明してきた。その後、8月3日には治療を受けていたすべての人が全快(核酸検査=PCR検査で陰性と判断した)したと発表し、これを受けて8月10日に金正恩(キム・ジョンウン)総書記は朝鮮労働党中央委員会と内閣が招集した全国非常防疫総括会議で、「約3か月にわたるウイルス撲滅対策によって、感染症危機が完全に解消されたと判断し、最大非常防疫戦の勝利を宣布した。

金正恩総書記はこの会議で、「我々が収めた高貴な勝利は我が党の防疫政策の勝利であり、我が国家の危機対処戦略の勝利であり、我が人民特有の強靭さと一心団結の勝利であり、朝鮮式社会制度的優越性がもたらした偉大な勝利である」と述べ、自らの統治を自画自賛した。

また、金総書記の妹の金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党中央委員会副部長は、「総書記は貴重な人民の生命を守るために連日、党中央委員会政治局会議を招集」し、直接対策を立てたと述べ、さらに「高熱でひどくやみながらも、自身が最後まで責任を取らなければという思いから、一瞬たりとも横になることができなかった総書記」と、「病魔との闘いを乗り越えた人民の姿について」語り、領袖(金正恩)と人民の情と信頼こそ勝利の決定的な要因だったと、最高指導者(金正恩)の天才的な洞察力とリーダーシップと崇高な人民愛がコロナ防疫戦で勝利をもたらしたと、金正恩をたたえた。

北朝鮮のメディアは、「北朝鮮がワクチンに一切頼らず(ワクチン未接種)、ウイルスの感染を未だ防げていない国々と異なる方法を取った。それは、感染源を断つために地域別封鎖と単位別隔絶措置を講じる一方で、全住民集中検診を行い、発熱者は1人残らず隔離して治療した。

国内にいるすべての人々が定期的に検診を受け、発熱症状が確認されれば、例外なく隔離・治療する措置が、他国の方法(ワクチン接種等)よりも実効性があることが証明された。朝鮮ではこれまで約470万人の発熱者が治療を受けて完治した。死者は74人、致命率は0.0016%だ。朝鮮が成し遂げたこの現実は、世界の医療史に残る貴重な成功事例だ」とこれまた自画自賛していた。

しかし、感染者ゼロ、治療受けていた人々も8月3日で全快、北朝鮮での新型コロナ感染戦の大勝利を発表してから、20日後の8月23日に「4人の発熱患者確認」の報道は、最高指導者である金総書記の「科学防疫」の成果を無にするものであり、メンツ丸つぶれである。

北朝鮮では新型コロナ感染流入が公表されて以来、これまで述べてきた「1人残らず隔離して治療にあたった」と自慢していたが、住民の中には「各地にできた隔離施設に収容されるのを恐れ、熱が出たことを隠す人もいた」と報じられており、4人が新規感染者なのか再発者なのかに関わらず、面目躍如(めんもくやくじょ)ならぬメンツ丸つぶれの金正恩総書記の対応が注目される。両江道の医療関係者や道の労働党幹部の粛清が予想される。(宮塚コリア研究所代表 宮塚利雄)

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