デジタル化のみではNG。Windows95設計の日本人エンジニアが語るDXの本質と展望

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昨今あらゆるところで叫ばれている、イノベーションやデジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性。とはいえそれらについての正確な理解が広がっているとは言い難い状況であることも、また事実ではないでしょうか。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では、Windows95を設計した日本人として知られる世界的エンジニアの中島聡さんが、MicrosoftとAppleの事例から学べる「イノベーションの真実」を紹介するとともに、自身が考えるところの「DXの本質」を解説。さらにDXの今後の展開についても詳述しています。

プロフィール中島聡なかじま・さとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

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イノベーションを起こす組織と人と

私は、Microsoftや(自分で創業した)UIEvolution(Xevo Inc.)も含めて、いくつかの会社とさまざまな人と一緒に仕事をして来ましたが、一つだけ大切にしていることは、お互いに信頼出来る優秀な人との関係を長く保つことです。

人材の流動性の高い米国では、転職は日常茶飯事で、人の会社への「帰属意識」は日本と比べてはるかに低いと言っても良いと思います。しかし、逆に「この人なら信頼出来る」「この人とならまた別の会社で働きたい」とお互いに思えるような人との関係はとても強く、そんな関係が、会社という枠組みを乗り越えてネットワーク上に張り巡らせており、それがリクルート活動(雇う方と雇われる方の両方)でとても重要な役割を果たしています。

今回、そんな関係を持つ人の一人から、彼が最近転職した先の医療関係の会社(Alcon、テキサス州本社)のイベントで基調講演をしてほしいと頼まれたので、話す内容を考えているところです。

話すテーマとしては、

  • Speed of Innovation
  • Impact on Missing out / Moving Slow /Examples
  • Future of Digital / Where the marketing is going

の3つを与えられています。

期待されているのは、私がMicrosoft時代に関わった製品開発の話から、何らかの教訓のようなものを引き出した上で、今後、Alconが、そしてそこで働く人々が、どんな行動を取れば良いのかという示唆を与えることです。

製品開発の話としては、Windows95の話が一番面白いとは思うのですが、全部話すと長くなってしまうので、そこが悩ましいところです。

キーとなるポイントは、

  • 私がSmalltalkでプロトタイプを作り、それがMicrosoftの「未来のOS」として発表されてしまった話
  • 「次世代OS」として会社が本腰を入れたCairoプロジェクトが、あまりに巨大なプロジェクトになって破綻してしまった話
  • 私がそのプロジェクトから抜け、「中継ぎ」でしかなかったはずのWindows 3.xチームに移籍して、「未来のOS」から数多くのアイデアを拝借して実装してしまった結果がWindows 95になった話

の3つです。時間があれば、そこに、

  • Windows95とInternet Explorerの統合は、私のプロトタイプがきっかけで始まり、Windows98の目玉になり、Netscapeからシェアを奪うのに成功したものの、独禁法に引っかかり、$1 billionの罰金を支払うことになってしまったこと

を加えることが可能です。

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