では、もし不正受給があった場合はどのような懲戒処分になるのでしょうか。
それについて裁判があります。
ある郵便会社で、社員が100回にわたり、旅費の不正受給をしていたとして懲戒解雇になりました。そこでその処分に納得がいかなかったその社員が会社を訴えたのです。ちなみにその不正受給の方法は
・社用車を使用していながら公共交通機関を利用した場合の交通費を請求
・クオカードが宿泊費に含まれるプランで宿泊し、クオカードを含む宿泊費を請求
などでした。そして、その総額はなんと約194万円(正当な旅費との差額は約54万円)にもなったのです。
では、この裁判はどうなったか?
「懲戒解雇は無効」
会社が負けました。
その理由の一つが「他の懲戒処分の社員との懲戒処分のバランス」です。実はこの会社ではこの交通費の不正受給に関連し
・3名→懲戒解雇
・1名→停職3ヶ月
・9名→減給
と多数の懲戒処分を行っていました。そこでこの社員と他の懲戒解雇の社員と比較するとそこまで悪質ではなく(他の懲戒解雇の社員はホテルから未記入の領収書をもらい、虚偽の宿泊日数や金額を記載した領収書を提出するなどしていました)、むしろ停職3ヶ月の社員と同程度くらいでした。それにも関わらず懲戒解雇は重すぎるため「懲戒解雇は無効」と裁判所は判断したのです。
いかがでしょうか?実務的にはこの「懲戒処分のバランス」というのは非常に重要なポイントです。
例えば、以前にある事案で懲戒処分を「減給」としていながら同じような事案で今回は「懲戒解雇」とするのは、通常は認められない場合が多いでしょう。
逆に、なんらかの事情で懲戒処分を軽くしてあげたいと考える事案があったとしても今後、別の誰かが同じような事案を行ったとしても同じ懲戒処分で良いかということも考える必要があります。