米国の罠にハマっただけ。安倍元首相「インド太平洋論文」を本当に書いたのは誰か?

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安倍元首相の外交功績として語られる、「自由で開かれたインド太平洋」構想の提唱。しかしそこには大きな疑惑が存在しているようです。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』では著者でジャーナリストの高野孟さんが、同構想の端緒となった安倍氏の英語による論文が国内主要メディアでほとんど報じられることがなく、邦訳の出版も許されなかったという不可解な動きを紹介。その上で、この論文の「真の執筆者」を推測しています。

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※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2022年10月31日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

「強制的従属」より遥かに悲しむべき「自発的隷属」/安倍晋三がまさに「スマート・ヤンキー・トリック」の玩具

日本が対米従属から逃れられない構造に組み込まれていることについては、白井聰『永続敗戦論』や矢部宏治『知ってはいけない隠された日本支配の構造』など、数多の指摘があるが、それを日本の政府・支配層のみならず国民まで含めて、こちらから進んで奴隷的な従属を敢えて求めてきた「自発的隷属」の問題として捉え直したという意味で、松田武『自発的隷属の日米関係史』(岩波書店、22年8月刊)は極めて刺激的である。

スマート・ヤンキー・トリック

松田によると、「ある国が相手国から何かを得たい、手に入れたいと思う時には、まず相手国にその旨を伝え、外交手段や時には力ずくで欲しいものを手に入れていくというのが常道」であるけれども、このような正面から扉を叩くやり方が必ず成功するとは限らない。そこで「あらゆる手管を使って根回しをし、最終的には相手国から差し出される、場合によっては懇願されるという形で、欲しいものを相手国から手に入れるという方法」があり、それを米国の政治用語で「スマート・ヤンキー・トリック」と呼ぶ。「頭のいい米国人流の騙しの手口」とでも訳すのだろうか、相手に「お願いだから貰って下さい」とまで言わせ、「そうか、そこまで言うなら貰っておこうか」と恩着せがましいことを口にしながらも、手だけは素早く動いてサッサと封筒を内ポケットに仕舞っているというような、いやらしいやり方である。

「実はあれが欲しいんだ」ということを、直接には言わずに、いろいろなルートを通じて、外堀を埋め内堀を埋めるように丁寧に伝えて行き、相手の方から思い通りの内容の依頼あるいは懇願が出てくるように仕向け、そこでおもむろに検討の上、「温情の証し」として受け入れを表明する。そうすれば、自分の欲望をむき出しにせずに済むし、依頼の発生源が相手であるように見せかけて他の競争相手からの批判をかわすこともできる。

戦後の日米関係初期で言うと、1947年「天皇メッセージ」がまさにそれだと、松田は推測する。

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