米国の罠にハマっただけ。安倍元首相「インド太平洋論文」を本当に書いたのは誰か?

 

この不自然さの裏にあるのは?

岩上は書いている。

▼世界に向けて英文で日本の地政学的戦略、それも隣国との間に緊張と対立を呼ぶセンセーショナルな論文を発表しておきながら、国内にはアナウンスせず、しかも、こうした安倍内閣の内外へのアナウンスの使い分けをよくよく心得てのことか、日本の主要メディアは、この論文の内容を翻訳して一般の日本国民へ伝えようとしてこなかったのである。この気味の悪さはいったい何ごとか。

▼この論文の邦訳は、本来であれば、プロジェクト・シンジケート叢書の第2弾にあたる『世界は考える』の中に収録されるはずであったという。ところが、我々のもとに版元の土曜社の編集部から、献本が送られてきたが、安倍論文は収められていなかった。担当編集部に問い合わせると、英文で全世界に読まれたはずの論文を、邦訳で本にまとめるに際して、安倍総理サイドが論文の掲載を承諾しなかったという。日本語で、広く日本国民に読んでもらいたいとは思わなかったらしい。いや、読んでもらっては困る、と考えたというべきか……。

PSには各国の主要メディアが会員として参画しており、日本では朝日、読売、日経が入っているので、昨日首相になったばかりの安倍がそこに論文を発表したことを気が付かなかったはずがないし、東京新聞が報じたのであれば何らかのフォローがあって当然だろう。まことに気味が悪い。PS叢書は当時、土曜社が出していた年刊誌で、12年8月から16年2月までに6冊を出し、そのうち14年1月と15年2月の号には安倍の別テーマでの寄稿があるが、肝心の13年6月の号には上記論文の和訳が載るはずだったのに載らなかった。さらに探ると、土曜社がその事情について、次のように「お断り」を出していたことが判った。

▼24人の執筆者のうち、安倍晋三首相のエッセイだけを収録することができませんでした。入稿前夜に、ある人物から連絡があり、収録を断念しました。「ある人物」などというと物騒ですが、今回の安倍論文の英文発表に尽力された方です。

▼2月4日、安倍晋三事務所から「日本語翻訳出版をお断りする」との連絡。あきらめきれず、手を尽くす。ある人物へのコンタクトをプラハに依頼し、日本語翻訳のチェックを受けることに。2月12日、プラハから翻訳チェックを通ったとの連絡。「2点ほど但し書きが必要だが日本語版出版はOK」のこと。2月13日、ある人物と国内でファーストコンタクト。プラハ経由だけでなく、直に確認をとっておきたいと考える。2月20日、ある人物から「日本語への翻訳NG」の連絡。入稿が翌日に迫るなか、やむなく収録を断念する……。

さあて、この「ある人物」は誰であり、何の目的で英文の論文をPSに発表しようと「尽力」し、またどういう理由で和訳発表を止めさせたのだろうか。この経過説明から分かることは、この論文に日本語の原文は存在せず、英語で書かれたもので、それを土曜社の雑誌に載せるには「翻訳」しなければならなかった。安倍に英語で論文を書く能力はないから、彼ではない誰かが書いたということである。それは「ある人物」なのか、その先にいる誰かなのか。私の推測は、ワシントンのネオコン的な反中国派で、なぜなら論文の中に南シナ海が「北京の湖」となりつつあるという表現があるが、これと同じ表現をワシントンのゴロツキどもの文書で見た記憶があるからである。この安倍に対する「スマート・ヤンキー・トリック」の真相解明は、安倍が外交に強いというフェイクをぶち壊すためにも必要なので、今後とも追及していきたい。

なお、本誌No.971に安倍論文の本誌仮訳があるので、参考までに以下に添付する。

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