米国の罠にハマっただけ。安倍元首相「インド太平洋論文」を本当に書いたのは誰か?

 

安倍晋三の「インド太平洋」も同じ

さて、この「スマート・ヤンキー・トリック」による自発的隷属という情けない姿は、今なお続いているばかりか、第2次安倍政権によってますます酷くなった。安倍支持者たちによると、安倍は外交が得意だったそうで、その筆頭に挙げられるのは彼がいち早く「インド太平洋」という名の冷戦型「中国包囲網」構想を打ち上げ、それに米国を巻き込むことに成功したというお話である。

某防衛大臣経験者などはあるシンポジウムで「戦後初めて安倍さんが戦略構想を打ち上げて米国がそれに付いてくるという歴史的、画期的な局面が生まれた」と、目に涙を浮かべんばかりの感動を込めて語った。同席していた私は、「何を言っているんですか。インド太平洋構想の最初となったあの論文はなぜ英語で、米国の雑誌に出て、しかもなぜ日本語訳を出すことを安倍事務所がためらったのですか。一体あれは、誰が書いて、安倍の名前で発表させたのですか。私もまだ調べがついていないので誰とは言えないが、それ自体、1つのスキャンダルなんじゃないですか?」と言い、その元大臣を黙らせた。

第2次安倍政権は2012年12月26日に発足したが、その翌27日付の国際的な情報・論説サイト「プロジェクト・シンジケート(PS)」に安倍の名で掲載されたのが「アジアの民主主義国の安全保障ダイヤモンド」という論文である。PS自体は、ジョージ・ソロスやビル・ゲイツなども関わり、ジョセフ・スティグリッツやジョセフ・ナイなども寄稿する幅広の言論NPOで、プラハに本部がある。現在も活発な活動を続けていて、私も無料のニュースレター配信に登録して気になる論文があると時折チェックすることもあるような存在ではあるが、少なくとも日本ではさほど目立つ情報源ではない。そのためせっかくの安倍論文を私は気づかず、さらに年が明けて13年1月16日付東京新聞が大きく報じたようだがそれも何故か見落としていて、ややもしてIWJの岩上安見がこれを問題視したのに教えられて、本誌でも後追いしたような次第だった。

Project Syndicate
Asia’s Democratic Security Diamond
(PSサイト上に今も残っている安倍論文。ただし有料)
● 【岩上安身のニュースのトリセツ】「対中国脅威論」の荒唐無稽――AIIBにより国際的孤立を深める日本~ 安倍総理による論文「セキュリティ・ダイヤモンド構想」全文翻訳掲載 2015.7.4
安倍首相最大の外交成果「インド太平洋構想」の甚だしい時代錯誤

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