国内外で孤立するプーチンにとって、ボタンを押さぬ理由がなくなった核兵器

2022.11.01
 

プーチン氏にとって抑止の道具の範囲を超えた核兵器

そして、伝統的友好国であるインドは中国以上にロシアを明確に非難した。インドのモディ首相は9月はじめ、ロシア極東ウラジオストクで開催された東方経済フォーラムの場でプーチン大統領と会談し、「今は戦争や紛争の時代ではない」と明確にロシアのウクライナ侵攻を批判した。

インドは日本・米国・オーストラリアとともに自由で開かれたインド太平洋の実現を目指すクアッドを構成しており、欧米陣営からロシアと距離を置くよう求める強いプレッシャーに晒されている。インドとロシアは武器供与などで伝統的友好関係にあり、モディ首相は難しい舵取りを余儀なくされてきた。しかし、侵攻が長期化する中でこれ以上はロシアを庇いきれないと判断し、上述の発言をプーチン大統領にすることとなった。

これらの直後、プーチン大統領は部分的動員と東部4州併合という行動に出た。既に国際社会ではウクライナ侵攻自体がプーチン大統領の暴走に値するが、部分的動員と東部4州併合というものは中国やインドにとっても暴走に捉えられていることだろう。中国やインドという存在を失うことは、プーチン大統領にとって極めて重いものだ。もう理解してくれるのは、欧州最後の独裁者といわれるベラルーシのルカチェンコ大統領しかいないかも知れない。

以上のように、プーチン大統領を取り巻く環境は内外双方で悪化している。今後はそれが悪化すればするほど、プーチン大統領がさらに暴走しないかが懸念される。そのような中、懸念されるのがウクライナのNATO加盟に関する動向だ。ゼレンスキー大統領は東部4州の併合に対抗し、NATOに加盟する意思を明らかにした。

既に、NATOに加盟する中・東欧9カ国の首脳も10月2日、ウクライナのNATO加盟を支持する方針を明らかにした。支持を表明したのはチェコやスロバキア、ポーランドやルーマニア、バルト3国などだが、プーチン大統領が長年NATOの東方拡大に対して強い不満を抱き、それがウクライナ侵攻の背景にあることから、こういったNATOによる動きはプーチン大統領をさらに挑発する恐れがある。

プーチン大統領にとれる選択肢は狭まってきている。よって、影響を一部の地域に制限できる小型戦術核などは具体的な選択肢になっている恐れがある。核兵器というと広島長崎を思い浮かべてしますが、もっと局地的な核使用は可能である。これまでのプーチン大統領の発言や行動からは、核は決して抑止のための道具だけではなくなっている。

image by: plavi011 / Shutterstock.com

アッズーリ

専門分野は政治思想、国際政治経済、安全保障、国際文化など。現在は様々な国際、社会問題を専門とし、大学などで教え、過去には外務省や国連機関でも経験がある。

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