ポーランド「ミサイル落下」騒動で判明。西側の“エゴ”が生んだ世界の分断

 

G20そしてASEAN+3の場で「ロシアによる核兵器の使用は断じて許さない」という声を繰り返して、他国との連携をアピールしています。それはG20サミットの場で王毅外相からラブロフ外相に直接に伝えられたと言われていますが、実際の内容は伝わってきません。

「ロシアに核兵器を使われてしまうと、それが対中国でなくても、世界は混乱に陥り、台湾併合という宿願の達成のみならず、中国を経済及び軍事的に真の超大国に押し上げるという計画が全て狂う。それは避けたい」

長く一緒に仕事をしてきた中国の友人はそのように説明してくれました。

同時に「ゼロコロナ対策の徹底と不動産業界への締め付け、そしてトランプ政権時から激化の一途を辿る米中対立によって、中国経済が高成長を毎年のように達成することは出来なくなった。また李克強首相が退任し、習近平政権の経済的なブレーンも第3期には見当たらないことから、来年以降、中国の経済的発展のかじ取りを担える人材がいないといえる。それは中国人民からの政権への反感を生むことになるため、国民の目を内政・経済から外交に向けないといけないと考えているのだろう」と、今回の外遊でフレンドリーさをアピールしている習近平国家主席の姿勢を説明してくれました。

この内容の正確度は分かりませんが、今回の一連の会合時に、3年ぶりの米中首脳会談を受け入れ、日中首脳会談も受諾しにこやかに対応する姿勢を見ていると、「これは3期目を確実にし、自らの権力基盤を固めたことからくる余裕の表れ」なのか、「それとも外弁慶の習近平国家主席らしく、日米とも対等に振舞い、堂々と台湾問題などでも一歩も退かない姿勢をアピールすることで、“世界から認められているリーダー”というイメージを国内に与えたい」のかはよく見ておく必要があるでしょう。

そこにはまた別の要素が絡んでいるようです。

ロシアによるウクライナ侵攻以降、侵攻そのものや核兵器使用の可能性については批判をするものの一向にロシアに対して圧力をかけない姿に、これまで親中だった中東欧諸国やバルト三国が相次いで中国との協議の場から抜けているという厳しい現状があります。

欧米からの働きかけはもちろんあったようですが、中国がロシアに対していつまでも甘いことに愛想をつかしたというのも理由として挙げられるでしょう。

王毅外相らが訪問して繋ぎとめをしたようですが、散々な対応をされたことで見切ったのか、外交・経済的な“紅い波”をより一層アフリカ大陸と中東諸国に注ぎ、ロシアと共に築いてきた国家資本主義陣営の拡大を進めています。

それと並行して、ロシアによるウクライナ侵攻に対して欧米諸国やその仲間たちが行うのをまねて、中国から離れる国々に対しての輸出を控えたり、借金の即時返済を求めたりと“制裁”措置に出るようになってきました。

そこでうまく振舞っているのがASEAN各国とアフリカ、中東諸国であり、それらはウクライナをめぐる分断の構図で“どちらにもつかない”第3極に属する国々でもありますが、うまく欧米諸国との距離を保ちつつ、中国とも友好的に付き合うという作戦を継続することで、恐らく対立軸・分断構造の中で利益を得ようとしているのだと思います。

とはいえ、最貧国に分類される国々は確実に大きな損害を受けることになり、より反欧米・反中ロの感情が高まっています。

気候変動の激化により、自然災害に見舞われ、大きな被害に直面していますが、先進国および国際機関の目がウクライナ戦争に向かう中で、支援が滞る悲劇に直面することになっています。迅速な支援が届かないだけでなく、ロシア・ウクライナ戦争の影響で小麦をはじめとする穀物の供給が滞り、脱炭素のトレンドに乗って石炭から移行した天然ガスも欧州や日本が挙って買いあさるため、貧しい国々には回ってこず、重大なエネルギー危機も引き起こしています。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

初月無料で読む

 

print
いま読まれてます

  • ポーランド「ミサイル落下」騒動で判明。西側の“エゴ”が生んだ世界の分断
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け