ポーランド「ミサイル落下」騒動で判明。西側の“エゴ”が生んだ世界の分断

 

そこで上手に手を差し伸べるのが中国とインドです。中国とインドは互いにアジア太平洋によるライバル関係にありますが、ロシア産の天然ガスや原油が安価で手に入ることから、それらを周辺国に分け与えることで着々と支持固めを行っています。

欧米諸国といえば、自ら課した対ロ制裁の影響でロシアからのエネルギー資源の共有が止まっていることから、自らがエネルギー危機に直面していることで他国を支援する余裕がなく、G20などで気前よく持ち出される支援の約束も、実際には途上国からの信用回復の材料にはなっていないのも事実です。

そのような中、バリ島で開催されたG20サミットには、実は大きな期待が寄せられていました。

「ロシアをめぐる分断はあるが、G20が経済的な協力関係を協議する場になれば、もしかしたらコロナや戦争などの影響で滞り、スランプに陥っている世界経済、および途上国における窮状を救う道筋を示すことが出来るかもしれない」

そのような期待感も、会議前には表明されていたようですが、残念ながらG20サミットもロシア非難の場に変わり、実質的な議論は空回りしたようです。

プーチン大統領が欠席し、代わりに出席したラブロフ外相も早々とバリ島を離れたがゆえに、一応、議長であるジョコ大統領とインドネシアの顔を立てるべく、ロシアへの非難も含めたような内容で声明は合意できるようですが、それは結局、何一つ成果を生まないものになる恐れがあります。

多くのメディアは「国連が麻痺して世界は完全に議論が出来ない場所になったと思われたが、今回のG20がそれを救った」という論調を展開していますが、私が疑問なのは、「具体的にどこが成果と言えるのか」という点です。

ロシア非難を受け入れたから?何かしら具体的な信用回復への道筋が示されたから?それとも…。

今回、ロシア製のミサイルがポーランドに落下した事案が発生した際、G20首脳会議開催中にもかかわらず、G7とNATO諸国は、G20をないがしろにして、自分たちだけで会合を行った姿勢は、他の参加国に対して失礼なことであり、かつ議長国インドネシアにもまた恥をかかせることになったようですが、これについて、日本を含むG7諸国はどのような説明をするのでしょうか?

合意と成果を強調するジョコ大統領の表情もどこか暗いのは、G7ではない他のG20諸国の怒りが、実際には中身の議論で合意を生まなかったことに加え、一層の分断をこの世界に生み出してしまったのではないかと、私は恐れています。

ちなみに上記のG7とNATO首脳による緊急会議には日本の岸田首相も出席し、得意げに笑顔でカメラに目を向けていましたが、円卓に並んだ首脳の席順を見た際、岸田総理はどこにいたでしょうか?

会議を呼び掛けたバイデン大統領の隣は、新たに英国首相となったスナク首相と、その反対側はカナダのトルドー首相でした。トルドー首相の隣はマクロン大統領、スナク首相の隣はドイツのショルツ首相…岸田総理は絵の右下の端のほうに座っていました。それもバイデン大統領からは一番遠い位置に。

外交の会議においては、この席順はかなりクリティカルな問題なのですが、このような状況を見て、本当に「日米同盟は強固であり…」と認識できるかは疑問です。

しかし、世界において明確化している分断において、立つサイドを決めてしまったことは疑問がなく、今後その決定が、日本外交と国家安全保障にどのような影響を与えうるかについては、非常に慎重に考えて行動しなくてはなりません。

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