ゼレンスキーの謝罪遅れが命取り。世界がウクライナに向けた反発

td20221121
 

勃発からまもなく9ヶ月を迎える、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻。欧米諸国内からの停戦を求める声に対して首を縦に振らないゼレンスキー大統領ですが、ロシア国内でも強硬派が主導権を握ったため、戦争の長期化は免れない状況となってしまったようです。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、ウクライナ紛争の最新の戦況を詳しく解説。さらにロシアを始めイランや北朝鮮といった、国際社会の協調を乱すばかりの「ならず者の国家群」に対して、より強度の経済制裁を科すべしとしています。

この記事の著者・津田慶治さんのメルマガ

初月無料で読む

 

ウ軍の次の攻撃場所は?

ヘルソン州ドニエプル川西岸からロ軍は撤退し、ウ軍はこの地域の機甲部隊を次にどこに回すかである。ロ軍は撤退部隊をドンバス方面に回している。ウ軍の攻勢に出る場所がまだ、分からない。そして、冬の地面凍結が北から徐々に始まり、機甲部隊が動ける状態になる。

巡航ミサイル攻撃

ロ軍は、地上攻撃が期待通りではないので、巡航ミサイルとUAVによるウクライナ全土のインフラ攻撃をし始めた。11月15日は90発以上の巡航ミサイルの内73発を撃墜、自爆型無人機10機の内10機を撃墜したが、S300の迎撃ミサイルが、ポーランドに落下して、2名が死亡した。

17日、さらに新たな大規模ミサイル攻撃を行った。

当初、ロシアのミサイルがポーランドに落ち、2名死亡と報道されて、これは第3次世界大戦になるかと世界は心配した。しかし、NATOのAWACS監視で、ウ軍の迎撃ミサイルと分かり、ホッとした。

このポーランドの事故に対して、ゼレンスキー大統領が自国ミサイルではないとの見解を示したことで、世界から反発が出ている。特にポーランド世論が激昂してしまう可能性があり、ゼレンスキー大統領は、なるべく早く謝罪した方が良い。

しかし、ミサイル攻撃での迎撃率が、格段に向上した。10月10日の巡航ミサイル84発中43発迎撃、UAV24機中13機で、迎撃率は50%程度であったが、15日は80%になっている。

対空防御のNASAMSの撃墜率は100%であり、この兵器の有効性が証明されたようである。このため、多数のNASAMSの供与が必要である。

一方、ロ軍のミサイルは、ほとんど使い切ったようであり、攻撃の中にKh-55核弾頭巡航ミサイルがあり、弾頭部分を外して普通弾頭にしたものであり、Kh-505巡航ミサイルが不足して、核ミサイルを転用した物と思われる。今後はイラン製のミサイルになるのであろう。

それと、11日以前の攻撃で電力設備などのインフラが破壊されて、1,000万人以上が停電に見舞われたが、17日に、ほぼ全土の電力が回復したようであるが、消費電力量の確保はできていないので、計画停電は依然として続いている。

しかし、このミサイル攻撃で分かることは、ロシア内での強硬派プリゴジンの影響力が大きく、政権内停戦派の思惑を木っ端みじんに、粉砕したことである。

プーチンは、強硬派の意見を取り、停戦派の意見を破棄した。このため、この冬の間、戦争は続くことになる。ワグナー戦闘員を撃破して、強硬派プリゴジンでも渋々、停戦に向かわせないと、停戦にならないことを示した。

ということで、このミサイル攻撃は、ロシア国内の強硬派対停戦派の権力闘争の結果でもあることがわかる。プーチンは強硬派の意見を取ることも分かった。

このため、どうしても、強硬派スロビキン総司令官は、ドンバスで勝たないといけないことになった。このドンバスの中心戦闘員はワグナー部隊でもある。

米ミリー統合参謀本部議長もロシア停戦派のロシア内での闘争に負けたことが悔しいのか、ウ軍は冬でも大きな成果は得られないと言っている。また、ウクライナは明確な目標と時期を明示する必要があると述べた。しかし、当分、戦闘が続くことになる。停戦はない。

この記事の著者・津田慶治さんのメルマガ

初月無料で読む

 

print
いま読まれてます

  • ゼレンスキーの謝罪遅れが命取り。世界がウクライナに向けた反発
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け