「戦犯はトランプだ」中間選挙で大勝を逃した共和党に広がる“独裁者”離れ

 

その中身ですが、宗教保守派の支持者向けに非常に平易な英語で、自分の生い立ちを綴っているのですが、その前の「プレリュード」という序文では、2021年1月6日の議会襲撃暴動事件を取り上げて、「怒り」を明確にするとともに、この問題においてはトランプと完全に決別したとしています。

ある意味では、夏のアリゾナ州知事予備選に加えて、この自伝を出したことで、ペンスは一躍時の人となったと言えるでしょう。昨年1月の副大統領退任以来、公衆の面前では現在のトランプに対する賛否については黙して語らず、立場を明確にしてこなかったペンスですが、今年の夏以降は非常にハッキリものを言うようになっています。何かが吹っ切れたようでもあり、話しぶりには好感を持たれています。

そんなわけで、ペンスがある意味で「トランプ批判というタブー」を打ち破り、そして中間選挙の「戦犯はトランプ」という雰囲気がこのムードを後押ししているのが、現在の共和党内と言えるでしょう。これを反映したイベントが、11月19日(土)にラスベガスで行われたユダヤ系共和党員大会と言えます。

ここでは、トランプも親ユダヤ的な演説をしていますが、注目を浴びたのは「その他」の面々でした。

まず、一部では「本命視」されているフロリダ州のロン・デサンティス知事は、「既に戦いは始まっている」と思わせぶりなことを言いつつ、「西岸地区は占領されているのではなく、領土紛争地だ」と親イスラエル強硬派的なコメントをしてアピールをしていました。

また、以前はトランプの忠臣であった、クリス・クリスティ元ニュージャージー知事は、「共和党にとってトランプは癌細胞だ」として、トランプの存在を放置していては共和党は選挙に「負け続ける」というような表現で、激しくトランプを非難していました。

特に「ペンシルベニア(上院+知事)、ミシガン(知事)、ウィスコンシン(知事)」で敗北したということは、このままでは「共和党は大統領選で勝てない」ことを意味すると指摘して、強い調子で「脱トランプ」を訴えていました。

また、これもトランプの忠臣を偽装しつつ、巧妙にトランプ政権から離脱したニッキー・ヘイリー元国連大使は「近々に大きな発表をする」と大統領選出馬を匂わせつつ「自分は選挙で負けたことがない」と自信をのぞかせていました。

選挙結果を受けた新しい議会の開会は年明けになるのですが、共和党議員団の新議会におけるリーダーシップも決定しています。下院は、ケビン・マッカーシーが下院議長になり、上院はミッチ・マコネル議員が院内総務として続投となります。この人事も、共和党主流派としてトランプを牽制した動きと言えるでしょう。

そんなわけで、共和党の方は多士済々であり、トランプ打倒ということを多くの政治家が堂々と宣言する状況になっています。ただ、政策論議としてはまだまだ見えない部分があり、今後はトランプとの敵対における「合従連衡」の動きと、政策の問題が複雑に絡み合って行くように思われます。5点ほどチェック項目を挙げておきたいと思います。

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