「戦犯はトランプだ」中間選挙で大勝を逃した共和党に広がる“独裁者”離れ

 

1つは、ロシア=ウクライナ政策です。トランプとその支持者は、ウクライナは腐敗しており、これ以上の支援は不要という立場です。この立場は、プーチンが本格侵攻した中で、非戦闘員の犠牲を厭わない非人道的な姿勢を見せる中では、かなり支持が縮小していると思われます。とにかくプーチンと「つながっている」というトランプには共和党内でも厳しい視線があるのは事実でしょう。

例えば、ニッキー・ヘイリーなどという人は、軍事外交的には故ジョン・マケインなどと同盟関係にあったわけで、国連とNATOを軸とした姿勢にはブレはありません。ただ、トランプをどんどん無力化して行った場合に、共和党がその路線にスッキリ戻るのかというと今ひとつ不透明な部分があります。

それは、ウクライナに対する支援疲れがあるということと、バイデン一家、特に次男のハンター氏とウクライナの関係を「暴けばバイデン家に打撃を与えられる」という誘惑と言いますか、好奇心が捨てられないという問題があります。更に言えば、ゼレンスキーは「やり過ぎ」という感覚、そして共和党の核に巣食っている「孤立主義の本能」が覚醒するという問題もあります。この点については、できればトランプを含めた予備選の中でしっかり論争が可視化されることに期待するしかありません。

2点目は中国政策です。共和党の政治家には自分たちは保守だから、容共ではなく反共であり、従って民主党よりは中国に厳しくするというような発言が目立ちます。ですが、その中身が不明確です。ブッシュ時代のように「経済提携」に傾斜する立場もありますし、一方で、南シナ海+東シナ海+台湾の問題に関する強硬姿勢も共和党にはあります。

反面、共和党というのは、人権外交というものには関心が薄い伝統があります。これはトランプもそうですが、アンチ・トランプも似たりよったりという感じがあります。また、バイデン政権が中国には非常に厳格な姿勢を取ってきた中で、共和党としてはもう少し柔軟にという姿勢で差別化する可能性もゼロではないと思われます。こちらも、今ひとつ可視化されていないように思われます。

3点目は環境エネルギー政策です。現在は2022年ですが、ここに至ってもアメリカの保守派の中には、温暖化理論を否定し、COP27の枠組みを嫌う勢力があります。このアンチ環境政策というのが、どの程度出てくるのか、まだまだ不透明です。

トランプの場合は、民主党の政策の反対をやりたいという政治的動機から、この問題を「いじって」いたように見えましたが、もっと露骨に化石エネルギー産業ともう一度癒着して行くのか、動きを注視してゆく必要があると思います。

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