事前予想では共和党の圧勝と伝えられていたものの、結果的には「民主党辛勝」となったアメリカ中間選挙。そんな選挙の1週間後にトランプ氏が次期大統領選への出馬を表明しましたが、もはや党内における前大統領の威光は過去のものになりつつあるようです。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では著者で米国在住作家の冷泉彰彦さんが、「トランプ批判」がタブーではなくなった共和党の動きを中心に、今後のアメリカの政局を考察。年明けまでは大きな動揺は起きにくいとしつつ、その後の市場如何では本格的な政局モードへの突入もありうると予測しています。
※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2022年11月22日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
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中間選挙後の米政局は嵐の予兆
中間選挙は、まだ下院の残り4議席について集計が続いています。その内訳はカリフォルニア3議席、コロラド1議席です。投開票から3週間近く経っているわけで、いかにも怠惰な印象を与えますが、多くの場合は州法に従って僅差の場合は、最集計をしたり、法的な規範に基づいて作業が進められている中では、とりあえず待つしかないようです。
最新の情勢は当選当確ということですと、下院の435議席については、民主213(8減)、共和218(8増)となっており、とりあえず共和党の過半数は確定しました。残りの4ですが、共和3、民主1となって214対221という感じになるのではという感触です。僅差であって、病欠と造反で容易にひっくり返るという不安定な政局、あるいは絶妙なバランスになるということです。
一方で、上院は民主が50を取って、共和は49、残りはジョージア1議席で、これは12月6日の再選挙を待つ格好です。ということで、上下両院ともに微妙なバランスになって行きそうです。
そのバランスですが、まずバランスが崩れて、政局が流動化しているのは共和党の場合に顕著です。まずは、15日のトランプ出馬という宣言がありましたが、そのリアクションは極めて静かであり、漠然とではありますが、「中間選挙大勝に失敗した戦犯はトランプ」というムードが広がっています。
同じ15日には、トランプの副大統領であったマイク・ペンスが自伝を『だから神よ助け給え(So Help Me God)』という何とも意味深長なタイトルで出版して話題になっています。
ペンスは、長い間、トランプへの賛否については沈黙を守ってきましたが、この夏の予備選では公然と反旗を翻すに至りました。特にアリゾナの知事選では予備選段階で、トランプと激突しています。トランプは右派のキャスターであるキャリ・レイク候補を立てて、州知事選でありながら「選挙は盗まれた」というスローガンを前面に押し出しました。これに対して、ペンスはカリン・タイラー・ロブソンという同じく女性候補でこちらは穏健保守を立てて対抗、州の共和党政治家の多くはロブソンを推したものの、予備選では惜敗していま
す。
ところが、統一候補となったレイクは本選でも「選挙は盗まれた」というキャンペーンを続けて落選してしまいました。非常に後味の悪い結果となった一方で、この結果はペンスの加点となっています。そんな中で、自伝のタイトルの「So」というのは、「自分は自身の大統領選出馬を意識しつつ、トランプと対決するに至った」という暗黙の文脈を受けて「だから神を助け給え」という意味合いで受け止められています。
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