ほんまでっか池田教授が警告。囚われるとドツボの埋没コストとタラ・レバ妄想

 

埋没コストを切れないというのと、タラ・レバを夢見てドツボに嵌るのは、何も戦時ばかりではなく、一般の人の日常生活においても良くみられる傾向である。少し前まで、美味しそうな投資話につられて、全財産を失ったという話がよく話題になっていたが、話を聞いてみると、これも埋没コストを切れないので、ずるずると投資を続けた結果だということが多い。

とりあえず、1年で2倍になりますからという、投資会社の勧誘員の口車に乗せられて100万円投資したとする。半年くらいして電話がかかってきて、どうも、ちょっと具合が悪くて、このままでは損してしまうのであと100万追加してくれれば、今度こそ、必ず儲かりますから、と言われて、そこでまた追加の100万円を預けてしまう人が結構いる。この人の頭の中では最初の100万円が埋没コストになってしまうのは避けたいという心理が働いている。100万円全額帰ってこなくても、私が愚かだったのでまあ仕方がないというふうには、人はなかなか考えられないのだ。

あるいはA社の株を100万円分買って、すぐに90万円に下がったとする。これは失敗だったと考えて、すぐ売ってしまう人は、株式投資に向いている。しかし多くの人は、いきなり10万円損するのは忍びないと思うのだろう。少し待ってみるかと思っているうちに80万円になり、70万円になりどんどん下がり、やがて40万円くらいで落ち着く。ここで売るくらいなら、もっと前に売っておくべきだったと後悔する人は多いが、多くの人は、そのうち戻るだろうと期待して売らずに、この株はいわゆる塩漬けになる。

売ってしまえば、埋没コスト確定だからだ。40万円で売って別の会社の株を買えば、短期で儲かるかもしれないが、なかなか、踏ん切りがつかない。どっちがいいか分からないときは、人は今までの状態を続ける方を選ぶことが多い。それで、しばらくすれば、A社の株価は徐々に回復してきて、5年後に102万円になったところで、やれやれ、損しなくてよかったよと思ってやっと売る。やれやれ売りである。

その直後に株価は急騰して、150万円くらいになる、というのがよくあるパターンだ。100万円投資して5年で2万円しか儲からなくても、銀行預金よりはましだけれども、埋没コストを過度に気にする人は投資には向いていないことは確かである。

少し前のメルマガにも書いたように、カルト宗教に嵌って抜けられないのも、埋没コストを切れないからだ。沢山お祈りをして、沢山お布施をして、死後の世界が約束されているのに、ここで離脱してしまえば、今までの精神的・金銭的な努力が水泡に帰してしまうと思うから、カルトから抜けられないわけだ。

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