タラ・レバの妄想についてはどうだろう。合理的に考えればインチキ臭い儲け話に、一部の人がなぜやすやすと飛びつくのかというと、これは、100万円が1年ごとに倍々になったら、大金持ちだ、というバラ色の未来を夢見るからだ。頭の中で夢見ているだけなら問題はないが、実行に移すと、神風特攻と同じく悲惨になることが多い。ギャンブルで身を持ち崩す人も多くはタラ・レバ症候群の患者だと思ってよい。
例えば、万馬券を夢見て、馬券を買う人は多いが、短期的にはともかく、長い目で見れば、買えば買うほど、確率的には損をすることは必定なので、合理的に考える限り、馬券を買うのは愚の骨頂ということになる。配当率は大凡75%なので、100万円投資すれば、平均25万円損することになる。それでもやめられないのは、万馬券が当たった時の快感が忘れられないのと、自分が投票した競走馬が勝てば、投資額の10倍以上の払い戻しがあるというタラ・レバの夢を見るからである。
私も若い頃(ハイセイコーが大人気だった頃)に、時々馬券を買っていたことがあったが、数年でバカバカしくなってやめた。どう考えても儲からないことが分かったからだ。私の知り合いで、何十年と馬券を買っている人がいるが、この人の話によると、自分のお気に入りの競走馬の馬券を買って競馬を見るのと、そうでないのとでは、興奮の度合いが違うそうで、1000円くらいで熱い応援ができるのは、入場料を払って映画を見るのと同じで、損したという気はしないとのこと。そういう人はギャンブルで身を持ち崩す心配はない。(メルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』より一部抜粋。続きはご登録の上お楽しみください、初月無料です)
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