解説
これは、ジョージ・オーウェルが『1984年』で描写した社会そのものです。
彼は、市民が常に「テレスクリーン」と呼ばれる双方向テレビジョン、さらには町なかに仕掛けられたマイクによって屋内・屋外を問わず、ほぼすべての行動が当局によって監視されている社会を描いていたのです。
それはまさに今の中国の姿です。
今回のデモ行進は、1989年の天安門事件以来、最も広範で公然たる政治的抗議行動です。
しかし中国当局はハイテクを駆使して、主催者や不満分子を狙い撃ちし、拘束することによって封じ込めることができるのです。
注目すべきは監視システムの構築に対して中国の人々は反対してこなかったという事です。
「何も悪いことをしていないのなら、隠すことはない」という考えのもと、多くの人がこのシステムを支持してきたとの記述です。
自分には関係ない、自分に向けられることはない、と思っていた武器が初めて自分に向けられる恐怖を多くのデモ参加者が感じているのです。
さらに記事を読みましょう。
多くの人が検閲の経験を持っていたが、自宅への警察の訪問はあまり一般的ではなく、より威圧的である。
厳しい取り調べを受け、二度と抗議活動に参加しないようにと警告された後、警察は彼のアパートを後にした。
彼はこの試練に「恐怖を感じた」と言い、デモ集会が生み出した勢いを抑制する効果があると信じている。「再び人々を動員するのは非常に難しいだろう」と彼は言った。
逮捕されたり、警察に声をかけられたりした後、多くのデモ参加者はVPN(仮想プライベートネットワーク)や、テレグラムやシグナルといった海外のアプリの利用を敬遠するようになった。
当局に目をつけられている今、携帯電話で使っているソフトウェアがより厳しく監視され、より多くの警察の注意を引き、拘束される可能性があるからだ、と彼らは言っている。
解説
中国でデモに参加した人の恐怖が分かります。
しかし「この問題は中国だけの問題だ」とは言い切れないものがあります。
テクノロジーの進歩によって、人々の行動の監視が簡単になりました。我々はGAFAによって常に監視されていると言ってもよいでしょう。
今は便利に使っていますが、自分の行動記録が時の政府・権力者によって利用される未来がないとは言い切れません。
そういった思想弾圧の萌芽があれば、「自分には関係のない話だ」とは考えずにいつか自分にもその刃が向けられる可能性があると見たがよいと考えます。 (この記事はメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』12月4日号の一部抜粋です。この続きをお読みになりたい方はご登録ください。初月無料です)
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