ロシア軍はいっぱいあるんですね。となると、そのような意味でも、この機会に出さざるを得ない、ですから出すということになっているのだと思いますね。そのことをどう考えるかというのは色々あると思うのですが。3ヶ月、これから3ヶ月くらいの間にウクライナがコテンパンにやられてしまい、ウクライナ軍が消滅の危機を迎えるなどということがあれば、戦車を送る話も意味を失うのかもしれませんが、そうでなければウクライナ軍が生き残れば、戦車の供与は大きな力になって、その後の世界の諸変化につながるかもしれない。
まあ、戦車で世の中が変わるというのも馬鹿馬鹿しい気がしますが、現在はそのような状態なのだというふうに思います。やっぱりこの戦争は普通のことではなくて、未だになぜ思いとどまることが出来なかったのか、という疑問がつきないのですが、これはもうプーチンさんにとっては完全に自滅の道以外のものではありえない気がするんですね。
この件に関して、自衛隊の元幹部の発言がありましたけれど、その中に一つ感心したものがありまして、この間、ロシア軍の司令官の交代が頻繁にあったじゃないですか。で、今、4人目か5人目でゲラシモフ総参謀長が就きましたよね。参謀総長というか、制服組のトップがこの戦争の司令官になったということは、ロシア軍が、ロシア軍のどの部分もゲラシモフの意思によって動員されるといいますか、動かされることになるのですね。これ、凄いことでしょ。ゲラシモフさんまではそうではなかった。今回の戦いに勝つためにロシア軍が組織を変えて機構を変え、外征軍、国外に出て行って軍事的な目標を達成して返ってくる、そのために特別に編成された軍隊を用意しようということであればまだ分かるのですが、そうではなくて、既存のロシアの各地域がありますが、それそれの司令官だったり、あるいはスロビキンさんみたいに航空宇宙軍の司令官だった人、そういう部分的なトップの人がこれまでは司令官になっていたのです。それ以外の、自分が担当していない部分の行動について、特別な軍事行動だからということで、真の司令官的な機能を持ったかというと、どうもそうではなかったらしい。
どういうことかというと、ロシア軍というのは基本的に防衛的な軍隊で、外征と言いますか、外国を侵略するようには作られていない。特別軍事作戦を行うには特別な軍事の態勢が必要だったはずなのに、それを作らずにやっていると。それが色々な作戦の混乱であるとか、数々の失敗に結びついているのではないかということでした。ああ、なるほどなと思いました。そういう意味ではアメリカは海外で戦争を散々やってきましたが、ちょっと違ったんだろうなという気もします。
ウクライナの侵略の総仕上げ…なんて言うと変ですが、この戦いに負けたらロシアにはもう後がないという戦いをこれから春期大攻勢でやろうとしているらしいのですが、その帰趨は軍事オタクの興味範囲ではなくて、我々の日々の生活、今、この物価高がものすごく、その影響は明らかにウクライナ侵略の悪影響が一因ですので、そういうことも含めて関心を持ちつづけなければならない問題だなと改めて思います。
(『uttiiジャーナル』2023年1月19日号より一部抜粋。全てお読みになりたい方はご登録ください)
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